第13話
「っ! かーくん!」
ダンジョンから出てくる俺に気づいた麗奈が駆け足で寄ってそのまま抱きついてきた。
少し勢いが強く、よろめきながらも彼女を抱きとめる。
「ただいま、もう大丈夫だと思う。」
「良かった……ほんとに良かった……」
「何とかなったよ。それより寒いからそろそろ家に帰ろう。」
そのまま車に乗りこみ、フカフカの席に座ると緊張の糸が切れたのかすぐに意識が遠のいた。
「……くん、かーくん。着いたわよ、かーくん。」
「んん……」
「家の場所はここで良かったわよね?」
「あぁ、もう着いたのか。ここで合ってるよ。」
「今日は本当にありがとう。 また報酬の話もあるから出来れば明日中にうちのクランまで来てくれるかしら?」
「了解、起きたら行くよ。」
「待ってるわね、おやすみなさい。」
「麗奈もおつかれさま、おやすみ。」
麗奈の車を見送り、家の中へと入る。
そのまま眠ってしまいたいが、さすがに風呂に入らなければ血と煙の匂いが酷すぎる事に気付きシャワーを済ませた。
倒れこむように布団にダイブして目を閉じる。
ふと、違和感を感じた。
何時もの騒がしい相方とケロちゃんが居ないことに気づく。
リッちゃんはまだ良い、しかし、ケロちゃんが居ないのはさすがに不味いのではなかろうか。
不安に駆られ、探しに行こうとした時、玄関の扉が勢いよく開いた。
『たーだいまッスー!』
「え、あ、おかえり?」
『なんで疑問形なんすか? というかまだ寝てなかったんすね。 さてはこのリッちゃんが恋しくてねむれなかっギャフン!』
どうやら心配して損したようだ。
拳骨を落として辺りを見渡すが、ケロちゃんの姿が無かった。
「ケロちゃんはどうしたんだ?」
『あぁ、ケロちゃんは流石にこっちで生活は出来ないッスからね〜、
「そうなのか、ペットが飼えると思ってたんだが。」
『んー、それは厳しいッスね。 テンション上がると火を吹きまくってしまうんで、ここら一帯焼け野原になるッスよ?』
「それはマジ勘弁。でも、そっかぁ、ペット欲しかったんだけどなぁ。」
『ペットショップにでも行くッスか? お金には困ってないッスよね?』
「いやまぁ、それはそうなんだけど、ケロちゃんならダンジョンにも連れて行けるじゃん。」
『まぁまぁ、この良妻死神で満足してくださいッス♡』
「骨の嫁は要らん、肉付けてから出直せ。」
『カッチーン。 その言葉は流石のマスターでも怒るッスよ! この美しい骨の曲線見るッス!肉がなんぼのもんじゃいてやんでぃ!』
「はいはい、健康的な骨だね〜。 んじゃもう寝るぞ。」
暫くじゃれ合っては居たが、さすがに眠気の限界であった。
布団に入ると、すぐに心地よい眠気が襲ってきた。
その睡魔に身を任せ、泥のように眠るのであった。
カーテンの隙間から指す光が眩しく、まだ眠たい目を擦りながら起床する。
時計を見るとちょうどお昼の時間帯であった。
疲れの割には早く起きたな。
固まった体を伸びをして解していく。
顔を洗い、歯を磨いているといい匂いが漂ってきた。
身支度を済ませてリビングに戻ると、知らない美人がキッチンに立っていた。
「え、だれ?」
「あ、おはようッス!」
「いや、誰だよお前。」
「……え?酷い!ウチとは遊びだったんすね!あんなに激しくて熱い夜を過ごしたって言うのに!キィィィ!!!!」
うん、確信した。
けれど、どういう事だ。 俺の知ってる彼女は骨のはずなのだが。
絹のような金の髪に、病的なまでに白い肌、目鼻立ちはハッキリしており、息を飲むほど美しい。
しかし、中身はリッちゃんである。
「何時もの骸骨スタイルはどうしたんだよ。」
「マスターが肉付けて出直せって言ったんじゃないッスか。」
「いや、言ったけど、言ったけれどもそんな事出来るとかお兄さん聞いてないよ?」
「へへっ、やればできる子リッちゃんです☆」
「そ、そうか。すごいな。」
「あれあれ〜?マスターなんかよそよそしくないッスか? あ!ウチが美人すぎて緊張してるんすね!このこの〜♡ ぎゃんっ!」
よし決めた、腹は決まった。
こいつはリッちゃんだ。外見がいくら変わろうとこいつに遠慮は要らない。
頭を抑えて涙目になって見上げてくる様も可愛く思えてしまうのが腹立たしい。
「受肉の影響か、いつもより痛かったッス……」
「ふざけるのが悪い。」
「マスターが緊張してたから解そうとしただけなのに……あ、ご飯できてるッスよ。」
「ん、サンキュー。」
出来たての朝食を食べつつ、今日の予定を考える。
確か麗奈のクランに呼ばれていたんだっけか。
どの道今日は流石にダンジョンに潜る気力もないし、久しぶりにオフにしようか。
そんな事を思いながら箸を進めるのであった。
ダンジョンのある日常。 そーし @sousi101
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