皇帝陛下に求婚されたので婚活に励みます(必死)
狐照
1.俺、婚活す
俺は今、必死になって婚活している。
大変に必死だ。
少し前まで結婚は出来なくていいと思っていた。
色んな理由があってね。
俺は下級貴族の三男坊だ。
貴族といっても下級だ。
しかも三男坊。
貴族的な生活はほとんど送ってない。
しかも望めない。
だから貴族が通う学校を卒業後、俺はすぐに職に就いた。
普通はね、貴族っつったら貴族的なお仕事をするんだけれども、うちは名ばかり下級貴族なので次男は皇国騎士団で働いている。
長男のみが貴族的なお仕事を引き継ぐっぽいが、割とガチなトーンで「お前やんない?」って言われてる。
正直、俺は三男で良かったって思ってる。
貴族的なお仕事ってのは、領地経営で…我が家に経営するような土地なんてのは殆どないのである。
とはいえ、領地は領地、管理義務はあるから、そこに住む人々の管理したり、それなりの収入があるから税金納めたりと、本当に面倒なデスクワークばっかりなのである。
俺はそれが出来なくはないし得意な方だが、やりたいことがあるので丁重に辞退させて頂いております。
そもそも我が一族、ジニアスは成り上がりの貴族だ。
魔の山脈と呼ばれている魔獣発生地の麓に居を構えた、魔獣狩り集団が祖である。
つまり、上級貴族からは影で煙たがられている、下級貴族からは表だって畏怖されている、平民からは憧れられている、魔獣狩りの功績により貴族になった一族なのだ。
この世に生まれた人間はみなスキルツリーという能力を持っている。
昔の人が名付けたそれは、基本自分だけが見ることが出来る樹だ。
最初は小さな芽。
その芽には小さな力しか持たないスキルが宿っている。
そのスキルを使用して鍛えて経験を積む。
すると芽は徐々に大きく育って、大樹となる。
増えた枝葉には新たなスキルが宿るのだ。
そんな感じでこの世に生まれたら、このスキルツリーの構成によって人生が決まるといっても過言ではない。
そして、我がジニアス家は魔獣狩りに特化したスキルを多く生やす血族だ。
一族の経験も受け継がれるから、魔獣狩りに優れた人と人が結ばれた結果なんだろう。
だから父は皇国屈指の魔獣狩りと称されている。
長男も次男もそれに続けとめっちゃ強い。
嫁いだ身の母も魔女と呼ばれている魔法使いだ。
妹はそんな母に似て優秀な魔法使いで、とっても素敵な魔法騎士と婚姻関係を結んでいる。
そしてみんな今日も明日も魔獣狩りに性を出す。
こんな感じで俺の一家は脳筋だ。
戦うことを生業としている血族だ。
なので、正直貴族の肩書きってのは足枷でしかない。
だから将来的には返上しようね、って家族会議でいつも話し合っている。
だって魔獣狩りで前線(意訳:山に常駐したい)出ないといけないのに、貴族には皇城で行われる会議出席する義務が在るのだ!とか言われるのだ。
うちの生業とは無関係なお話合いなんて、出席する意味が俺でも分からない。
長男はそーゆーのが苦手なのだ。
父も、次男も、母も一族全員、苦手だ。
俺がまぁまだ我慢できる方なので代理で出席している。
魔獣狩らねぇと前線崩壊すっから今回も代理ヨロって言われたら、出席せざるおえない。
それは俺がジニアス脳筋スキルツリーのセオリーから洩れた例外、だからでもあるのだが…。
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