第49話 ドラゴンと、賭け

Side:スパロ

 やっと、ドラゴンの巣穴までたどり着いた。


「ナノ、どういう作戦で行く?」

『まずベルベルちゃんが氷魔法を使い挑発して、イユンティちゃんが鎖で縛る。止めにスパロが必殺技だ』

「よし、それでいこう。ベルベル、氷魔法だって、巣穴を冷え冷えにしてやってくれ」

「うん、よいしょっと」


 ベルベルの杖から吹雪が出て、巣穴である洞窟を冷気で満たす。


「ギャオ?」


 ドラゴンの当惑する声が聞こえた。

 少し経って、ドスンドスンと地響きがしてきた。


『今だ』

「聖女様、お願いします」

「ええ、戒めを」


 聖女様の巨大十字架から鎖が三本出て、ドラゴンに絡みつく。

 ドラゴンは翼を封じられ、口を大きく開けた。


「不味いブレスだ」


 ベルベルが発動したのか巨大な氷の盾が出来る。

 高温の炎のブレスが氷の盾に直撃した。

 周りにはもうもうと水蒸気が立ち込める。


「ベルベル、ありがと」

「ううん、杖が勝手にやっただけだから」

「鎖が長く持ちそうにありませんわ」


『今だ。これを唱えろ。聖剣セクスカリバー、嵐を呼んで稲妻を呼ぶ。ギガボルト・アンチスティッフ・サンダーだ』

「聖剣セクスカリバー、嵐を呼んで稲妻を呼ぶ」


 風が巻き起こり水蒸気を飛ばし、空には雲が渦巻いた。


「ギガボルト・アンチョビスティック。ええと何だっけ」

『ぐだぐだだな。もういいいか』


 聖剣から眩い光が出る。

 それは稲妻だったようだ。

 轟音と共に、ドラゴンへ突き刺さる。


「アンギャァ」


 ドラゴンの悲鳴が聞こえる。

 聖剣が激しく動く。

 手から離れそうだ。

 その時、ゴーレムの手が聖剣を掴んで支えてくれた。


 稲妻が激しくなった。

 眩しくて目を開けてられない。

 聖女様とベルベルを横目でちらりと見ると、十字架と杖から、鎧かぶとが出て二人を覆っている。


 過保護だ。

 俺には何もなしかよ。


 ドラゴンの悲鳴が少しずつ弱くなっていく。

 そして、辺りを静寂が支配した。

 目を瞑っていたが、光で目がやられ良く見えない。


「目が見えないんだけど、どうなったの?」

『ドラゴンは黒焦げになったよ』


「【治癒】。喜捨をどうぞ。金貨1枚です」


 聖女様に治癒魔法を掛けてもらい、目が見えるようになった。

 跪いて金貨1枚を聖女様に差し出す。


 終わったんだな。

 いや始まりか。

 王女と婚約破棄しないといけない。

 先が思いやられる。


Side:ハイチック8000


 ドラゴンの巣穴に虫型ドローンを飛ばす。

 ドラゴンは寝ている。

 夜行性なのかな。

 計算ではあの巨体では飛ぶ事はおろか、歩く事すらかなわない。


 魔力ありきの生物なんだな。

 もっとも、宇宙生物だと、小惑星ぐらいの大きさの奴がごろごろいる。

 ガス状生物だと惑星の大きさを超える奴もいるくらいだ。

 このぐらいでは驚かない。


 スキャンした結果。

 体内には高濃度の魔力が存在する。

 第二の心臓といったところか。


 AIが作った魔力炉より性能が悪い。

 見るべきところはないな。


 ちゃっちゃと片付けよう。

 ベルベルちゃんが巣穴から引きずり出し。

 イユンティちゃんが拘束する。


 おっ、ブレスか。

 ドラゴンの魔力炉がフル回転するのが分かる。

 ベルベルちゃんの杖から氷の盾を出した。

 盾の中にバリアも張っておこう。


 戦闘機の主砲ぐらいの威力のブレスだった。

 宇宙生物を除けば、生き物最強かもな。


 スパロが必殺技を放つ。

 剣が振動するのは演出だ。

 ゴーレムの手を添える。

 エネルギー供給するためだ。


 恰好良さげな演出だろ。

 ベルベルちゃんとイユンティちゃんをナノマシンの鎧で保護する。

 閃光の99%をカットだ。

 でないと目にダメージを受けるからな。

 スパロは知らん。


 さてと、ドラゴンは巣穴にお宝を貯め込むってのが定番だけど、どんなもんかな。

 調査が終わる頃にはドラゴンは死んでいた。

 スパロが怪我をしないように加減したが、そうでなければもっと早く終わっていたところだ。


 お宝はというとあったんだけど、なかった。

 洞窟の壁がドラゴンの魔力で変質してたのがお宝。

 鉱物資源なのでサンプルだけ採取しておいた。


『スパロ、王女との結婚はどうするんだ?』

「破棄したいけど。何か良い手はない」

『ドラゴンの巣穴は特殊な鉱石で一杯だ。これを上手く使えよ。討伐した奴に権利があるんだろ』

「うん、考えてみる」


 鉱石を売った金で宮廷工作する展開が望みだな。

 きっとドロドロした人間模様が描かれるんだぜ。

 そして荒むスパロ。

 ベルベルちゃんとイユンティちゃんは離れていって、俺とハッピーエンドさ。


【そう上手くいくでしょうか。上手くいく確率0.000001%】

【なぬ。そんな事はない。絶対にない】

【賭けましょうか?】

【よし、俺が握っているエネルギーの10%を賭ける】

【成立ですね】


 さて、スパロがどうするか見物だ。

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