第46話 男同士の結婚式でまさかのスカートめくり
ドーピングのせいで絶倫に
なってしまったサン・ジュストは
小柄なマクシミリアンを気絶するまで
攻め続けた。ベッドの上での戦が始まってから
三回目の日の出を迎える頃、
童貞小男マクシミリアンは腰を
引っ張られる感覚で目を覚ました。
「さっきからどうして
わしの足を持ち上げているのかね?」
「これは早く子供ができるように
するおまじない」
要するに満タン状態からの
液漏れを防ぐつもりなのだ。
「わしとルイの子供……欲しいかも
……でも、またテルミドール
9日の破滅がめぐってきたら、
子供は不幸になってしまうではないか」
悩みなどどこかに行けと
ばかりに、淫乱な天使サン・ジュストは
チュウチュウ音を立てて
恋人(男)の乳首に吸い付いた。
童貞マクシミリアンが快感のあまり、
よだれを垂らし、白目をむいて
ヒイヒイ言っているところに、ついに
我慢の限界を迎えた
オーギュスタン・ロベスピエールが
ドアを蹴破って突入してきた。
「おい、エロ・ジュストめ、
いい加減にしろ! 体の弱い
兄さんを腹上死させる気か!
旅行中におまえがへまをしたせいで
町中が下品な噂でもちきり
じゃないか! かわいそうな兄さん、
昼夜を問わず不眠不休で
淫乱な天使に犯され続けて
さぞややつれているに違いない……」
このブラコンな弟はかねてより
兄の恋人(男)に激しい嫉妬心を
燃やしていたので、兄の体調悪化を理由に
責め立てる気満々でいた。ところがどっこい、
三日ぶりに見る兄の顔からはあばたが消え失せ、
お肌がツヤツヤになっているではないか!
「オーギュスタン、今すぐ
ここから出て行け! わしと
ルイの蜜月を邪魔するな!
ああん、そんなに激しく
中をかき回すのはやめてぇ」
童貞はクネクネしながら
恍惚の表情を浮かべた。
それから更に半日もの間、
腕組みをして仁王立ちになっている
弟に見せつけるように恋に狂った
二人の男は思いつく限りの
痴態を披露して飽きることなく
交わり続けたのだった。
「あんなに知的で真面目人間だった
兄さんが 四つん這いになって
さかりのついた動物みたいに
交尾しまくるなんて……エロ天使め、
兄さんを堕落させた恨み、絶対に忘れないからな!」
「このオッサン、何で延々と兄貴の情事を監視してるんだ?」
あきれた小鳥は籠の中で思わずツッコミを入れたが、
「うるさい! 何かあったら遅いから見守っているだけだ!」
と言い返されたのだった。腐女子であるシャルロットが大喜びで
天井裏から鑑賞しているのだから、そんな必要はなかったのだが。
昼過ぎになって突如、裸の男が乱入してきた。
「いってえな。一体、誰だ? まさか暗殺者!?」
突き飛ばされたオーギュスタンは痛みに
顔をしかめながら銃を取り出そうとしたが
招かれざる客が旧友マクシミリアンを過激化から救ってみせる
と意気込むカミーユ・デムーランだったのでニヤリと笑った。
デムーランは幼なじみを恋敵から奪い取るため、決死の覚悟で
こう叫んだ。
「し、死んだと聞いて心配したんだぞ、マクシム!
さ、さあ、おれを抱いてくれ!」
「デムーラン、今頃、何しに来た、出て行け!」
傲慢な天使は今にも恋敵を追い出そうとしたが、童貞は
「まあまあ、三人で仲良く寝ようじゃないか」
と言い出した。
「ようし、デムーラン、どっちが
マクシムを満足させるか勝負だ!」
「こ、子供の頃からマクシムをよく知っている、
お、おれの勝ちに決まってる」
こうして革命家たちの3Pが始まったが……。
「あああ、ルイ、もっともっと、突いてくれ!」
「マクシム、そんなに叫んだらイケボが枯れちゃうよ。
おれのソーセージでもしゃぶっていて」
とうとうデムーランは何もできないまま、
ベッドから突き落とされてしまい、
メス墜ちしてよがり狂う
幼なじみの姿に涙したのだった。
籠の中からこの事態を目撃した
小鳥はウンザリしながらつぶやいた。
「あーあ、ショッボいオジサンを
取り合ってバカみたい!」
それから間もなくオーギュスタンは革命家のシャリエが
殺された事件を取り締まるため、リヨンに派遣された。
ジョルジュ・クートンが温情処置を取ったため、
ジョセフ・フーシェと交代し、フーシェは大砲まで使って
大虐殺を行ったのだが、そんな黒歴史を繰り返さないためである。
「リヨンでフーシェに好き勝手させないためにおまえが
しっかり処罰するんだぞ」
兄の言葉も自分を遠ざけるためとしか思えなかった弟は
大砲こそ使わなかったものの、厳しい処分を
反乱者たちに下して八つ当たりしたのであった。
「マクシムはもともといい奴だったんだ。
それなのに、あの傲慢で性悪な子分の
サン・ジュストから悪い影響を受けておかしくなっちゃたんだ。
前世でおれたちを告発した不穏分子を取り除くには
童貞マクシムがすっかり色ボケになっている今がチャンスだ」
マクシミリアンに忘れ去られ、すごすごと帰宅したデムーランは
ダントンにサン・ジュスト排除を訴えた。
「そうかもな。童貞ヤツを罠にはめて大いに苦しめてやろうじゃないか」
童貞が注意力散漫で人の話をきかない特性を利用して
罠を仕掛けることに決めたダントンは
「サン・ジュストは生意気な嫌われ者だ、反革命容疑で
処分してもいいよな?」
と公安委員会の席上でサン・ジュストが不在の時に
話を切り出した。連日連夜の激しいプレイで寝不足になり、
ぼうっとしていた童貞は内容を理解しないまま、こう答えた。
「ああ、うん」
翌日、パリのパンテオンを借り切って行われた結婚式に
出席した人々は皆、ひそひそ話をしていた。
「どういうこと? ロベスピエール先生がどうして
エロエロなウエディングドレスを着て、
花婿姿のサン・ジュストさんが隣にいるの?」
「変ね。どうして花婿はロベスピエールさんで、
花嫁はデュプレ家の娘さんじゃないの?」
同性婚の法律を何度も議会に提出しては失敗していた
マクシミリアンはとうとう男同士の
挙式を強行することにしたのである。
客の中には新郎新婦の組み合わせに戸惑っている
いる者もいたものの、腐女子たちは大はしゃぎで
噂の二人を祝福していた。
「結婚おめでとうございます!」
「お似合いです! お幸せに!」
「兄さん、ドレス姿がすごくすてきよ。
レース編みの腕が上がったわね」
紺色のドレスにコサージュをつけたシャルロットは
うれし泣きしていたが決定的に振られた
エレオノールは悔しさのあまり
泣きながらシャンパンをがぶ飲みしていた。
「あなたさっきから飲み過ぎ。
私も飲みたくなっちゃうじゃん」
給仕に手渡されたグラスの中身を一気飲みしたシャルロットは
めまいがしてその場に座り込んだ。
「あれ? 私、お酒に弱くないはずなのにどうしたんだろう?」
ダントンからワイロをもらっていた給仕はしてやったりと
言いたげな顔をすると人混みに紛れてすぐに消えた。
「フハフハ、ロッティーちゃん、おれがベッドまで運んであげる」
鼻息荒いフーシェの魔の手が彼女に迫りつつあった。
「マクシム、お姉さまの様子がおかしいから見に行こうよ」
異変に気づいた天使はマクシミリアンをつついたが、
「シャルロットはお姉さまじゃなくておまえの義妹だろう」
というとんちんかんな答えが返ってきた。
そこに突然、武装したこわもての男たちがなだれ込んでくると、
「ルイ・アントワーヌ・サン・ジュスト、反革命容疑で逮捕する!」
と一方的に宣告し、ロベスピエールの猛抗議に耳を貸さず、
新郎をしょっ引いていったので会場は大混乱に陥った。
「ルイ・アントワーヌ! おまえを失ったら生きていけない!
わしも一緒に捕まえてくれ!」
ドレス姿のマクシミリアンは絶叫しながら恋人(男)を追いかけて
走り去ったのだった。
「ルイ・アントワーヌ! 今すぐ助けてやるから心配するな!」
一刻も早く追いつこうとあせるマクシミリアンの前に
肥満体の大男が立ちはだかって、けたたましい
笑い声をあげながら、
「邪魔だ、どいてくれ!」
と叫ぶ童貞のスカートを思い切りまくり上げた。
天使サン・ジュストは振り向くと、
「コラ、ダントン! おれにもめくらせろ!」
と絶叫したのであった。
ドレス姿に合わないと思ってメガネをかけて
こなかった童貞は相手の正体を知って愕然とした。
「喜べ、おまえたちの新婚初夜は牢屋の中、
ハネムーンは市中引き回しで行き先はコンコルド広場の
処刑台ギロチンだ。前世の悪行の報いをたっぷり受けるがいい」
「裏切り者、わしの愛する天使を返せ!」
激怒した童貞はダントンめがけて目から魔法光線を放ったが、
裸眼のため、ことごとく当たらなかった。いつの間にか
集まってきた酔っ払いに取り囲まれて童貞は
身動きが取れなくなってしまった。
「かわいい花嫁さん、エロいのはいてるね!」
「すげえな、これ、ほぼ紐同然じゃん」
などとはやし立てながら男たちは童貞のドレスを
容赦なく引き裂いた。
「さわるな! やめろ!」
「ウヒヒ、おれ、えらい議員先生を
汚してみたくなってきちゃった」
調子に乗って一線を越えようとした男の頭に
エレオノール・デュプレが投げたワイングラスが命中し、
頭がスイカ割り状態になった。
「今おれのダチを殺したのは誰だ!?」
倒れた痴漢の仲間たちは目を血走らせながら
あたりを見まわした。ダントンはすかさず、
「これは陰謀だ! この中に王党派やイギリスのスパイが
紛れ込んでいるに違いない!」
とけしかけたので、いたるところで乱闘騒ぎが始まった。
童貞はその間に運よく逃げ出したが、すでに
天使の姿はどこにもなかった。
「おいリリー、早く目を覚ませ!
風見鶏フーシェに襲われるぞ!」
小鳥は意識の底まで届けとばかりに耳の穴に
くちばしを差し込んでシャルロットに憑依中の
腐女子の名を呼んだ。すると彼女の呼吸が荒くなり口から
紫色のチョウチョの姿になったリリーを吐き出した。
「あれっ!? どうして急に憑依解除されたの?
この騒ぎは何?」
「急いで解毒の術をかけるから早く戻って!
サン・ジュストが突然、捕まって結婚式はメチャクチャだ!」
腐女子軍団は風見鶏フーシェの接近を阻止するために
シャルロットの周囲に人垣を作っていたが、
金縛りの術で押しのけられてしまった。
「ハアハア、ロッティーちゃん、もう逃げられないよ。
君は私と結ばれる運命なのだ。これは痴漢じゃないよ。
胸にチョウチョが止まってるから取ってあげるだけなんだよ」
ぐったりしたシャルロットの胸を
さわろうとした瞬間、不埒な風見鶏の顔面に
シャルロットのこぶしがめり込んだ。。
「グエーッ! 歯が折れた!」
「さわんじゃねえ! 腐女子の底力なめんなよ!」
フーシェの体はマリのように吹っ飛んで壁に叩き付けられた。
腐女子軍団は歓声をあげながら性悪な風見鶏に
一斉にとびかかり、袋叩きにした。
「ちょっとちょっと、皆ヒートアップしすぎ。
いくらゲスでも有名人を殺しちゃったら私が降格されちゃう」
あせったシャルロットは暴行を止めるため、こう言った。
「皆ありがとう。この雑魚にとどめを刺すのは兄さんに
頼んでおくから今日の主役たちを助けに行きましょう」
「ハアハア、ロッティーちゃんたら、こんなにもわしを
想ってくれていたなんて」
シャルロットの一言で命拾いした風見鶏は
ますます恋慕の情を募らせたのだった。
結局シャルロットはマクシミリアン・ロベスピエールと
サン・ジュストの救出に失敗し、処刑が明日に迫っていた。
自分の逮捕命令にマクシミリアンが同意したという
密告の手紙をすでに受け取っていたが
信じていなかった天使にとって今回の出来事は青天の霹靂だった。
プライドが高い天使は動揺を見せまいと虚勢を張っていたものの、
心の中は童貞への不信と怒りで荒れ狂っていた。
「マクシム、君がおれを裏切るなんて
思ってもみなかったよ。君を信じ切っていた
おれがバカだった。あの盛大な結婚式は全部
おれを欺くための茶番だったんだね」
失望と怒りのこもった目つきから恋人(男)の気持ちを
察した童貞は涙ながらに否定した。
「わしが裏切っただと!? 君は誤解しているんだ!
わしを信じてくれ! ダントンに罠にはめられたんだってば!」
一晩中、牢獄の中で童貞は潔白を訴えたが、
天使は彼に背を向けて寝たふりをしていた。
翌日ダントンとデムーランは手を取り合って、
ロベスピエール一味の処刑を見守っていた。彼らと立場が逆転したことに
感極まったデムーランは涙をこらえきれず、ワンワン泣くばかりだった。
サン・ジュストの番がきて、マクシミリアンに別れの言葉を告げにきた。
「マクシム、愛してる。短い夢だったけど、
また会えてうれしかったよ。アデュー!」
ほっぺたにお別れのキスをされた瞬間、マクシミリアンの
体内を魔力が駆け巡り、魔力放出妨害用の
拘束具がきしみ始めた。その間に天使は振り向きもせず、
スタスタと処刑台の階段を昇っていく。
跳ね板に天使の体が縛り付けられた瞬間、
童貞を無力化していた手錠と腰縄が砕け散った。
刃が落ちるのと同時に魔力が復活した
最強の童貞は口から火を放ってギロチンを
木っ端微塵に吹っ飛ばしたのだった。
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