江戸の暮らしの手触りの中に、異界の気配がごく自然に入り込んでくるのが印象的な怪談でした。仕事帰りの辻、焼飯の香り、夕暮れの人気のなさといった要素が、じわじわと此岸と彼岸の境目を曖昧にしていくのが巧いです。怖がらせ方も過剰ではなく、未練や喪失の気配が静かに滲んでいるのがじわりとしみる。短いながら、江戸怪談らしいじぃんとした余韻が残る一作でした。