タイトルを見た瞬間から、発想がとても好きでした。
「シュレディンガーの小説」。
公開する前の作品には、まだあらゆる可能性が残っている。
もしかしたらPVが爆増するかもしれない。
たくさんの人に読まれるかもしれない。
書籍化、アニメ化、授賞式――そんな未来まで、まだ消えていない。
創作をしている人なら、一度は心のどこかで考えてしまうような夢や期待を、こんなに軽やかに、そして面白く言葉にしているところがとても魅力的でした。
けれど、この作品の面白さは、ただの自虐や妄想で終わらないところだと思います。
公開しなければ、結果を見なくてすむ。
夢は夢のまま残しておける。
でも、公開しなければPVは確実に0。
その当たり前すぎる現実に戻ってくる流れが、笑えるのに、少しだけ胸に刺さりました。
同歩成様の作品は、身近な言葉や感覚をほんの少しずらして、「なるほど、そう見るのか」と思わせてくれるところが本当に楽しいです。
短い一話の中に、創作者の希望、不安、照れ、欲、そしてそれでも作品を外へ出してしまう愛おしさが詰まっていました。
書く人ならきっと頷いてしまう。
読む人も、創作者の心の中を少し覗いたような気持ちになれる。
軽く読めるのに、公開することの怖さと嬉しさが残る一作でした。