「医学が追いつくその日まで眠る」という近未来的な治療法を軸にした本作は、まさにSF的な想像力と人間的な感情が交差する物語の予感に満ちていて、冒頭から一気に引き込まれました。特に印象的だったのは、主人公・菅原八雲が目を覚ました瞬間の描写です。静かな病室、止まった時計、電気の通っていない世界。かつて「治療の希望」として眠った彼が目覚めたときに迎えたのは、人類の消えた荒廃の中だったというギャップが、なんとも言えない哀しさと不安を呼び起こします。