第四章 容疑者 石川蛍
第20話 蛍、呼び出しをくらう
人気のない美術室準備室。その人物は焦っていた。鍵は壊した。警備会社が異常を感知して駆けつける時間は大体二十分。その間に“ミッション”をこなさないとならない。
もちろん防犯カメラに映るだろうから量産店の服に顔の形を分かりにくくするN95マスク、ゴーグルに帽子は基本だ。
今ならまだ不法侵入と器物損壊だけで済む。バレた時に泣く人もいなくなる。
しかし、今はそれよりも差し迫った事情がある。ミッション遂行と行こう。
その人物は一気に入り、対象に向かってハンマーを叩き始めた。粉塵が散るが万全の装備のためむせることなく作業を続ける。
そうして対象を全て破壊したが、見つからない。
「ちくしょうっ!」
カムフラージュと腹いせも兼ねて制限時間ギリギリまで壁や備品に向かってハンマーを振り上げた。
「どこに隠した……」
現場から逃げ出し、服を防犯カメラの死角で取り替えながら苛立ちと焦りの感情だけが沸き立っていった。
〜〜〜
文化祭もアクシデントがありながらも、ようやく終わり、部活動も三年生は引退の時期に入った。
と、言っても進学校ではないため、まったりとしている。就職組や推薦貰っているものは部活に顔を出していたし、文化系のクラブだと結局顔を出してる三年生もいる。
蛍の所属する地学部には三年生が居なかったので、そういう引き継ぎはなかった。部員が少ない弱小部ではあるが、過去の琥珀発掘の大功績があるので辛うじてあるのが現常である。
「はー、文化祭終わったし、まったりと化石を探しに行きたい。寒いから日帰りで」
サンプルのホコリを掃除しながら蛍がぼやく。
「あー、俺も真奈にクリスマスプレゼントの準備をしないと。去年は意地と根性で水晶クラスターを見つけたけど、他に何か宝石質の鉱石探しに行こうかなあ」
金町も夏の活動で見つけた化石や鉱石を仕分けながら相槌を打つ。相槌というより惚気も混ざっているが。
「え? あんたの家は金持ちなんだから、コレクションの中からチョイスやら、買うとか出来たでしょ?」
「まあな。でも、自力で採ったものをプレゼントしたかったんだ。何というか、女子が手編みのマフラープレゼントするような感覚。あれだって買った方が早いが作るだろ? それに水晶は万能の効果あるパワーストーンだからな」
「うーん、私は合理的な方をとるけど。つくづく女子は宝石やパワーストーン好きよね。
もっと、こう、岩石の色合いやら模様とかクラックの入り具合やら水晶でも、ファントムクォーツやガーデンクォーツみたいなインクルージョンを愛でるとかパワー以外の魅力に気づいて貰えればいいのに」
「石川。毎回ツッコむが、お前の認識は一般的な女子とズレている」
「えー? 私も宝石質やガラス質の鉱石好きよ? 黒曜石だってきれいだし。今、欲しいのは
逸見石が何なのか判らなかったらしく、金町がスマホで検索する。
「石川、本当にマニアックだな。今見たら岡山県でしか出てないし、出回っている市場からして採掘期間が五年間しかない」
「そうなの! マイナーだから売られている物も高校生のお財布には厳しいの。オマケに半導体の材料になりそうなんてニュースもあるから余計に値上がりしそうで。でも、岡山なんて二泊三日しないと難しいよね。宿だと捜索難しいからキャンプ一式も必要そう」
金町の嫌味が通じない蛍は熱弁を振るう。
「ルックスと中身がここまで合わない奴もそうそういないな」
「ん? なんか言っ……」
その時、会話を遮るように蛍のスマホが鳴った。中を見るとクラスの連絡用のライムの通知であった
「『多村です。石川さん、まだ校内にいるのなら、職員室まで来てください』」
「へ? 多村先生から? 職員室に呼び出し?」
思わず声を上げると金町がなんか達観したような顔つきで言った。
「石川、お前、ついに呼び出しくらうほどの何かをやらかしたか」
「ひ、人聞きの悪いこと言わないでよ。ねえ、皆」
蛍は周りを振り返ってみるが、何故か皆蛍から目を逸らす。
「な、何故なの皆して。多分、レポートの提出遅れてるからその催促だよ。ちょっと行ってくる」
蛍はこうして職員室へ向かったが、これから起こることなんかちっとも気にせずに職員室へ向かった。
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