vol. 10 ODAと発展と貧困 ①

ザンビア共和国を例に出しますね。

まぁ、私の協力隊時代の赴任国がザンビアだったというのが理由なんですが。


ザンビアを知らない?

あっ、そうしたら本題の前に簡単にザンビアについて説明します。


ザンビアはアフリカ大陸の南部に位置しています。

具体的な場所を言うと、アフリカ大陸南端が南アフリカ共和国、

そこから北にジンバブエがあり、その更に北にザンビアが位置しています。

2018年のデータで恐縮ですが、人口が1700万人いて国土面積が752,600 km²。

めちゃくちゃざっくり日本と比べると、人口が日本の約10分の1(日本の人口は約1億2000万)、国土面積が2倍(日本の国土面積は378,000 km²)の国になります。

(https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/zambia/data.html#section1)


もし興味があれば一旦ネットで調べてみて下さい。

アフリカらしい?サバンナ/平原が多く、都市部はそれなりに高いビルとかキレイなショッピングセンターもあったりでかなり発展もしています。

あとはビクトリアの滝って、世界三大瀑布の一つがジンバブエとの国境にあります。

73の部族があり英語が公用語ですね。(旧イギリスの植民地だった為)

加えて現地言語が60以上あったりもします。

だから国民の殆どが英語以外に複数の現地語喋れる、、、

本当にこれは凄いと思ってます。


主食はシマっていう、トウモロコシの粉をお湯で溶いたお餅みたいなやつです。

(https://zambiankitchen.com/nshima-food/)

これを塩っ辛いオカズやお肉と一緒に食うとまじで美味い。

ただ、あっというまに高血圧コースだと思うけど、、、


もっと細かく沢山お話できますが、キリがないんでザンビア概要はここまで。


少し寄り道しちゃいましたが、改めてさっき私が「YesでありNo」と言った理由をこれから順に説明します。

とは言っても、この話題を説明するのに経済の話は避けれないのでまずはそこから。

すっごく堅苦しくてデータばっかりになりますが、我慢してもらえると幸いです。


はじめに、ザンビアの発展状況ですが、DAC(開発援助委員会:Development Assistance Committee)分類だと後発開発途上国、世界銀行分類だと低中所得国とされており、一人あたりGNIは2019年段階で$1,430ドルとなります。

ちなみに日本の一人あたりGNIは$41,513ドル(2019年)なので、言い方は良くないですが、ザンビアがどれだけ貧しい状況か?はざっくりと感じて頂けるかと思います。

※一人あたりGNIは平均給与とは別です。

 あくまで発展状況の指標ね。

 (https://www.dir.co.jp/report/column/20130606_007277.html)


1964年にイギリスから独立し、それ以降、ザンビア経済は着実に成長を続けています。

一人あたりGNIも途中増減はあったりしましたが、全体では右肩上がりの状態であり(実は2014年がピークでGNI一人あたり$1800あったんですが2015年以降は少し減少しちゃったり)、1964年当時が$210に対して、さっき言った通り2019年は$1,430ドル。

55年で実に6.8倍の成長!

(https://data.worldbank.org/indicator/NY.GNP.PCAP.CD?locations=ZM)

※GDPで比較すると、2019年が$231億米ドル、1964年が8.39億米ドル。

 まぁ最近は国の発展指標を測るのにGDPではなくGNIの採用が多かったりですが、、、


この成長のトリガーはなんだったと思います?

10円玉お財布に入ってます?

そうそれです。銅です。


ザンビアの主要産業は銅生産であり、ザンビア経済はその銅生産に依存しています。

#日本も少し前までザンビアから銅を輸入していました。

完全なモノカルチャー経済であり、2015年段階ではザンビア全体の輸出金額の内、銅の輸出が80%以上を締めているんです。

GDPで見ると銅の輸出がZambiaのGDPの27%を締めており、これだけ依存が高いので、銅の生産量そして国際価格が国の稼ぎに大きな影響を与えたりしてます。

(https://media.africaportal.org/documents/IMPACTS_OF_FLUCTUATING_COMMODITY_PRICES_ZAMBIA_1.pdf)


そんなザンビア経済ですが、1964年から順調に経済発展を続けているわけで、これだけ国が成長しているとなると国民の生活水準もあがっているだろうと予想できそうじゃないですか?


真実はどうなのか?


2015年段階において、ザンビアで毎日$5.5ドル以下で生活している人は人口の88.10%とされています。

(https://www.macrotrends.net/countries/ZMB/zambia/poverty-rate)

これはアフリカ諸国の中でも高い値です。

昔はもっとこの値が高かったのか?

実は、1991年における同状態の人口の割合が85.1%であり、なんと貧困率という点だと実は悪化してしまっています。

(人口が違うので単純に比較するのも良くないですが。ちなみに人口は年々増加しています。)

他の資料には、毎日$2ドル以下で生活している人は全人口の64%となっており、毎日$1.25ドル以下で生活している人も全人口の40%以上いると言われています。

(https://www.habitatforhumanity.org.uk/country/zambia/)


要は、国としては発展を続けているが、多くの国民の生活は豊かになっていないということになります。


なぜか?


GNIの話に戻しますが、そもそもGNIは国民総所得であり、要は統計情報であり、GNIが向上したからといって全ての人間が等しく所得を増やしているという保証はどこもないんです。

富の偏在が発生していてもGNIは上がるんです。

だから、[GNI成長=国民の貧困改善]とすることはできません。


では、数値としてのGNIの向上に寄与した富はどこにあるのか?

当然、主産業である”銅”に紐付きます。


突然ですが、質問します!

銅を採掘するのは銅鉱山ですが、この鉱山って誰が運営していると思います?

、、、そうですよね、普通は国とか国営企業とか思うじゃないですか。

実はこれが、違うんです。


答えは簡単。殆どが先進国の企業です。


ザンビアにはBig4と呼ばれる4鉱山(Barrick Lumwana、FQM Kansanshi、Mopani、KCM (Konkola Copper Mines)があり、国の銅生産8割を占めています。

この4鉱山の内、カナダに本社をおくFirst Quantumは、Kansanshi鉱山の主要出資者/運営者となります。

(https://www.first-quantum.com/English/home/default.aspx)

他のBarrick Lumwanaは、カナダのBarrickが出資/運営しており、

(http://www.barrick.com/English/home/default.aspx)

残りの2つも海外企業がその主要出資者となっています。

一応ザンビア企業のZCCM-IHも出資/運営に参画していますが、その規模は非常に小さいものです。

(https://www.zccm-ih.com.zm/)


要は、銅生産及び輸出による儲けがGNI/GDP向上に寄与しているが、実は事業利益の多くは出資元である海外企業がもっていっているという構造になっているわけです。


というか、なんでザンビアの鉱山なのに外資が?って思いますよね。


これには理由があって。

銅鉱山運営に必要な[銅鉱石を掘る]->[鉱石から銅を抽出する]->[銅として製品利用できる状態までにする]といった作業を行うには、技術力と多大な費用(設備)が必要なんです。

少し前まで最貧国とされていた国にそんなお金と技術力があるのか?と言われたら、答えは当然Noなわけです。

では、どうする?と言われたら、外国の力に頼らざるを得ない。


前述に重複しますが、鉱山開発ってめちゃくちゃ金がかかるので、これらの企業は現在の利益を得るまでに相当額の出資/投資をしているわけです。

ザンビアは露天掘り鉱山が多いですが、そこで作業する機器/車両はバカでかいしバカ高いし。

(この鉱山用車両とかに日立建機とかKOMATSUが入ってます)

更に採掘した銅鉱石への対処設備も必要です。

採掘される銅鉱石に含まれる銅の割合ってとっても低いので(1%とか)、その状態は銅として使い物になりません。

銅鉱石の状態(硫化鉱or酸化鉱)にもよりますが、専用設備を使って鉱石から銅を抽出し、更には電気分解などを行って銅として価値ある状態/輸出できる状態にする必要があります。

そこまでやって初めて、銅として使える状態になるわけです。

#実際にはもっと純度を高めたりしますが、、、そこの精錬は中国や日本でやったりもします。


要は、これらの企業が投資したから、ザンビアは今自国で銅を生産して輸出ができている。

そして、投資する側はビジネスを通して投資分を回収ってのは自然なこと。


実際、似たようなビジネスは世界中で行われています。


ただ、これだけ聞くとザンビアにとってのメリットがなさそうですよね。

自国で生産体制を整えられないから外資が入って、外資が生産体制整えて、事業利益をまるごともってかれている、、、


勿論ザンビアという国もこのビジネスで利益を得ていますよ。


(ザンビア政府と企業の間でどういったビジネスにおける契約がされているかはわかりませんが)少なくともザンビア政府は、これら企業が生産した銅の輸出時には税金がかけられるし、銅の売上の何%かはザンビア政府が取るになっているだろうし、他にも企業に対する所得税なども徴収できるし、なんといっても雇用を生み出しています。


私がザンビアに居たときには、マイン(鉱山)で働いているって言ってる人は多数いましたし、現地の雇用先で鉱山関係は憧れの的になってました。

なぜ?給料が良いから。


ただ、この鉱山事業での雇用というのも素直に喜べないところも多分にあります。


2014年段階の資料になるんですが、ザンビアのフォーマルセクター(公式に記録される経済活動)での勤労従事者は85万人とされており、その内、銅を含めた鉱山業の従事者はその10%である8万5千人とされています。

インフォーマルセクター(公式に記録されない経済活動。露店等)を含めたトータルの雇用シェアで言えば1%にしかならない。


まとめると、GDPの3割を締める鉱山業従事者は僅かな人数しかいないんです。


稼いでいるビジネス領域の従業員数が少ないってことは、富の偏在がこの時点で明らかになります。


ザンビアの鉱山事業は、国としてのGDP/GNIの底上げに寄与しているが、国民全体における生活水準向上という点でのインパクトは非常に小さい事業であり、今後も銅生産を背景としたGDP/GNIの成長が続いても、国民の多くはその恩恵に預かることはできないという状況なのです。


この歪さを作り出している一端が外資依存という状態であり、しかし脱却もできない、、、という状況が非常に長い間続いている、というのがザンビアの現状になります。

(https://miningforzambia.com/a-concentrated-mining-sector/)


ザンビアにある鉱山で、ザンビア人が労働力として働いているのに、その利益の多くが最終的には外資企業若しくはほんの一部のザンビア人にのみ帰属するという状態。


もちろん、繰り返しとなりますが輸出時や取引によって発生した利益には国として税金を課していますよ。

ただ、そうはいっても利益が国外に漏れ出しているのは間違いない。



・・・すみません。


のどが渇いたので、ちょっとタンマです。

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アフリカに行っても行かなくても、婚活はうまくいかない。 @O-SHI-RI

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