第25話 Gentle Dream

まったく...相変わらず寄り道ばっかだな、この旅は


強くなるために始めた旅だが、大分のんびりしているように感じる


しかし、やはり元いた町の周辺よりかはレベルの高いモンスター...それでも40〜46レベルくらいだろうか...がいるため何度も倒している内に俺のレベルは55までは上がった


それは、ケインがいなくなってからだと割とバカに出来ない成長だ


ケインの持っていたスキル(恐らく経験値が上がるスキルか?)によって上がりやすくなっていた俺たちのレベルが、ようやく実力に伴って来た気がする


レベルが上がると能力も上がる


しかし、その能力を上手く使うには、本人の実力...レベルとはまた違ったものが無ければ意味がない


たとえ戦争に戦車を用いたとしても、上手く操れなければ役に立たない。そういうことだ


.........


......


...


「レイズも分かってきたじゃないか」


二人の話し声が地下室にこだまする


「ふふふ、いい例えをするじゃないか」


「お前もこれくらい上手くなって欲しいところだ」


「なんだとー?」


「なんでもない」


...


相変わらず、"コイツ"は何を考えているのかが分からない...


俺のスキルの一つの読心術を用いても心の中が読めない。一体何者なのか...


「さて、そんなことより例のものを見せてくれよ」


「あぁ、これか。確かに強い武器ではあったが...」


俺はギーチェから拝借した巨大な鎌をバッグから取り出す


...


"今"となっては、このバッグの仕組みも気になるようになったな


何を入れてもすっと入ってすっと取り出せる。魔法の仕組みとはなんなのだろうか


「そうそれ」


「マサカージェノサイザーだったか?」


「それは表向きの名前だね。本当の名前は常闇斬...」


「とこやみざん?」


「そうそう、じゃあ試してみようか」


そういうと、"アイツ"は石を置いた


「ほら、イメージして...石を真っ二つに斬るのを...」


俺はイメージした


今から振り下ろすこの一撃が石を断ち切る


そのビジョン


「こうか?」


そして、俺は鎌を振り下ろそうと...


...


......


.........


「でも残念でした。この花、太陽光がなかったり、抜くとすぐ枯れちゃうんじゃ、これの意味も無いんですね〜」


そう言うと、レイが小瓶を再び取り出した


それをロゼが手に取る


「この小瓶、枯れない泉から取ってきた、花が枯れなくなる水が入ってるんですよ」


そんなものがあるのか


「それにぃ、透明なんでしょお?小瓶に入れちゃったら本当に入ってるかも分からないよねぇ〜」


「それは遠くから見たら解決するんじゃ?」


「いえ、恐らく、遠くから見ると白い花が見えるのは光の屈折がズレることによって見えるもので、これもまた本来の色じゃない。よって、水に入れると...あれ?どうなるんでしょう?」


しかし、それを確かめる方法は無い


「全く、本当に謎な花だよなぁ」


「なんらかの方法で太陽光を自作することが出来れば...」


「うーん、そもそも太陽光は他の光と違うのか?」


「魔法による光と、太陽の自然のエネルギーは由来が違うんじゃないでしょうか...」


...


なんでこんなことを考える羽目に...


「って、ギーチェはどこいった」


周りを見渡すとギーチェがいなくなっていた


「またどっかに行ったのか?あの変な能力をもった女の子は...」


レイがそう言った。あれは...変な能力で済むのだろうか...


というか、よく考えたら、あれはスキルなのか?


あれは、本来存在しないスキル


そう考えると、変な能力と言ったのにも納得がいく


レイはスキルを自力で身につける事が出来る辺り、俺たちよりは知識があるんじゃないだろうか


それより、ギーチェがいなくなったことについてだ


「あれ?ギーチェちゃんは...?」


ルシアがようやく正気を取り戻した


というか、起きた


「ひっ!何今のッ!?」


「まだ寝ぼけてるんですか?」


「違う、違うのッ!今!ほら!私に誰かが触れたのに!誰もいないの!」


いや、それは寝ぼけてるだろ


いや待て


「そういうことか」


「そういうことってどういうことよ!?」


「ギーチェ、イタズラはそこまでにしろ」


「えへへぇ〜バレちゃったかぁ〜」


すると何もなかった所から、ギーチェが現れる


「なっ」


「...なるほど!そういうことですか!」


そう、ギーチェは自分の周りに花をびっしり生やして、透明になっていたんだ


「これは面白いな」


「え?どういうこと?ねぇ!どういうこと!?」


そうか、ルシアは花について知らないんだったな...


「簡単な話だよ、ギーチェは実は幽霊だったんだ」


「そういうことだ、話を聞いてなかったのか?」


スレイが悪ノリに付き合う


「そんなわけあるかー!」


しかし、すっかり脳みそはフル回転していたようだ


......


...


すっかり日が落ち、俺は考えていた


この花を使って、例の図書館に忍び込めないだろうかと


しかし、残念ながら太陽光が無ければすぐ枯れてしまう。実用性は無さそうだ


日が落ちてからは、ギーチェも透明化出来ないと残念がっている


「さて、そろそろお別れの時間ですね」


「そうだな」


.........


......


...


私、全く役に立てなかったな〜


でも!あれはギーチェちゃんが悪いよ!


心のなかで今日を振り返っていた


「それでは、これで」


「ちょっと待てよ」


レイさんが引き止める


「はい?」


「景品渡すって約束したろ?」


「あーそうでしたね!でも...花を小瓶に入れてプレゼントの予定が無くなっちゃったんですよね〜」


そんな予定があったんだ


「じゃ、じゃあレイ!あれ!あれあげてあげましょうよ!」


「あれってなんだ?」


「これですよ〜」


そう言って、貰ったのは鉄製のなにか


ただの鉄の塊ではなく、れっきとした人工物みたいなもの


「え?これって銃じゃねぇの?」


「私が、えっと、結構昔に持ってたものなんですけどね?使い方も分からないんですよ。なんですけど、鑑定してもらってもよく分からないらしくて」


「ん〜壊れてるなぁ、でもなんとかしたら直せないか...」


レイズはさっきから分かってる風に話してるけど...


「まあ、"もしかすると"何か凄いものかもしれないから、ちょうどいい景品だろ」


「それに、昔の私の手がかりですしね...」


「...!?」


昔の...私?


「あのっ!なんだかそちらにとっては大事なものなんじゃないですか!?」


「あ、いえ、どれだけ調べても分からなかったので、恐らく私達には分からないと思います」


「だったら、お前たちが持っていた方が、何か役に立つかもしれないし、何か分かるかもしれないしな」


「そうか...それじゃあありがたく頂いておくぞ」


レイズはそう言って私に手渡した。荷物の管理係は私だ


前にヴェルちゃんのお母さんに貰った大きな錆びついた剣といい、変なものがどんどん増えていく


「それでは、そろそろお別れしましょう!」


「早く次行くぞ、次は何がしたいんだ」


「うっさいですね!そんなすぐに何したいかなんか思いつきませんよ!」


仲、やっぱり悪いのかな


「お前たちとはまた逢う事になりそうだ」 


「あ、あぁ、旅してたらいつかな」


「その時はもっと込み入った話をしよう」


込み入った話?レイズと何か話してたのかな?


「じゃ〜さよなら〜」


「じゃあねぇ〜!」


「また今度な!」


そして、みんなで手を振ってその背中を見送った


二人が行ったのは私達が来た方向。次に会うのはまた遠い先になりそうかも


すると、ギーチェちゃんが話しかけてきた


「うーん、最後まで気づかなかったなぁ〜」


「え?何に?」


「さっきから、あの二人を見て、仲が悪いと思ってるみたいだけど、本当にそう思う?」


急な話だった


「そ、そりゃそうよ、会った時からロゼちゃんレイさんに少し口が悪いというか...」


「あのねぇ〜嫌いな人とは喋らないし、嫌いな人のことは他の人に喋らないんだよ〜?」


「そ、それは、同じパーティーだから...」


少し何を言いたいのかが分かってきて、少しムキになって答えてしまう


「えへへ〜」


「え、急にどうしたの?」


「いやぁ〜私、思ったんだけど、黄色いお花畑で話したこと思い出してね〜」


「え?あの時は二人について特に話してないと思うけど」


また少し、自分は知らないというように、装ってそう言った


「いやぁ〜、いいんだよぉ〜?」


「もー、教えてくれたっていいのに」


「大丈夫大丈夫、自分に自信持ちなって〜可愛いよ〜」


...


私は...


  第三部 The new abnomal 完


.........


......


...


「いや〜綺麗だね〜」


「いやいや!綺麗とは言わないよ!これはー!」


さっきまでお花ばたけがあったのに、近くにいくとなくなっちゃった


お兄ちゃんは見えないお花らしいけど、見えないとお花じゃないよ


するととつぜんお兄ちゃんはすわりこんで、目をつぶった


「何してるの〜?」


「お兄ちゃん思うんだよ。目にしか見えないけど、そこに実在しないもの」


むずかしいなぁ...何を言ってるんだろう


「そして、目に見えないけど、確かにそこに実在するもの」


...


「本当にあると言えるものは"実在するもの"だと、お兄ちゃんは思うな」


「う〜ん、よく分からないよぉ」


「目にしか見えないものは、頭が勘違いしてるか、騙されているものなんじゃないかなって」


「だからっ!よく分からないってー!もー!!」


そう言ってお兄ちゃんをポコポコたたく


私の目には涙が少し滲んでいた


「ごめん!ごめんって!」


お兄ちゃんがごめんって言ってくれた、ゆるしてあげようかな...


...


「まあ、こうやって、目を閉じてそこにある花の美しさを感じるんだよ。触る感触とも、聞く感触とも、味の感触とも、匂いの感触とも、目の感触とも。そのどれとも違う、心でね」


さっきよりは分かる気がする


「分かった、私もやってみるね」


わたしもすわりこんで、目をつぶってみる


...


たしかに、なにか分かった気がした


...


そして


「あれ?なんだか消えちゃった気がするよ!?」


そこにあった花が、きえちゃったような、そんな感じがした


「え!?すごいぞ!よく分かったね!?」


すると、太陽はもう見えなくなってた


「この花は太陽がないとすぐ枯れちゃうんだ!だから、たった今枯れたのが、分かったってことなんだよ!」


「え?私すごいの?」


「凄いぞ!子供の感受性ってことなのかなぁ?さすがヴェル!」


「えへへ」


お兄ちゃんがなでてくれた、うれしい


あったかい


ずっとこのままだったらいいのになぁ


でも、お花がかれちゃうみたいにいつかはおわっちゃうのかなぁ


「枯れたお花って、もう直せないの?」


「流石のお兄ちゃんでも、すぐに消えちゃう"この花だけ"は直せないみたいなんだよ」


「そうなんだ...」


...


「私との絆は?」


「おお、カッコいいこと言うね」


本でよんだからね、えっへん


「そもそも、僕たちとの絆は壊れないよ〜直す必要ありませ〜ん」


「お兄ちゃんもカッコいい〜」


そうだよね、お兄ちゃんとのきずなはこわれないよ


これからもずっと


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