格差が蔓延る資本主義社会ーコンプレックスに狂わされる人々の話

これは、誰もが感じる「格差」について、深く考えすぎてしまった男の話です。

人類史において、格差がなかった時代はありません。 狩猟社会では肉体的な強さが、農耕社会では蓄積された資産が人を分け隔てました。そして現代の情報社会。インターネットは世界中の格差を可視化し、残酷な現実を突きつけます。

そんな現実に絶望した主人公は、社会へ一撃を加えるための計画を企てます。

この作品の真の恐ろしさは、主人公の視点の変化にあります。 それまで冷静かつ客観的に他人を分析していた彼が、ある瞬間、狂気じみた「主観」に支配され、正常な判断ができなくなるのです。その変貌ぶりを読んだとき、私は背筋が凍るような寒気を感じました。

社会派でありながら、人間の内面の闇を描いた傑作です。ぜひ読んでみてください。

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