襲撃後のリオラの道筋(仮)

第52話あの日の真実

 ノアくんとの幸せな生活が崩壊したあの日。


 奇襲を仕掛けられ、肉体が満足に動かせなくなってからいくつか魔法の攻防を繰り広げた。

 ノアくんには支援魔法を使わないように指示した。もし使ったら、相手は火の大魔法使い。

 何が起きているか見抜かれる可能性があるし、それで私が負けた場合、ノアくんが悲惨な目に遭うのは目に見えているから。


 巷で風の大魔法使いと言われているが、相手も火の大魔法使い、そして他にもそこそこのが何人かいる状況では分が悪すぎた。


 防衛に専念してもその上からダメージを蓄積され、勝ち筋が見えない。


 そんな中、撤退の道筋がチラつく。


 それは、私が研究していた転移魔法。

 魔力制御が尋常じゃないレベルで要求され、魔力消費も莫大である、未だ未完成の魔法。

 おそらくあの貴族やカトリーヌもこの研究が目当てだろう。


 だが、心が痛む。

 このまま続けても勝ち目はないが、逃げる事はノアくんを見捨てるということでもある。

 実際のところ、私が捕縛されて情報を吐かせるためにノアくんに拷問をするなんてことは当たり前にするだろう。

 私が執着するほど価値のある人間だって思われて、支援魔法がバレていいように利用されることだってありえる。

 だから、勝ち目のない戦いに固執せずに生存の道を探り、変にノアくんへの執着を見せない方が良いとは分かっている


 しかし、それでも大好きなノアくんを敵の手に渡して自分が生き残る道を選ぶことが罪悪感となって蝕む。


「ぐへへ、風の大魔法使いがなさけない!」


 奥で守られている貴族が醜く笑う。


「っ……うるさい」


「生意気な口を。こやつの口から色々聞きたいことはあるが……同格と言われる火の大魔法使いとウチの精鋭魔法使いたちの攻撃をここまで耐えるとは……。生かしておくのは危険か」


 そして、貴族は指示を出した。


「殺せ。そいつは危険すぎる」


 それを合図に、カトリーヌが大魔法を唱える。


「ーーー『大獄門』」


 魔法陣から飛来するのは、マグマ。

 分厚い灼熱の壁は、風魔法では押し切れなさそうだ。


 こうなってしまえば、もはや選択肢は一つになってしまった。


 私はせめてもの自己満足で、呟く。


「ごめん」




 私は、未完成の転移魔法を発動させた。




 ☆☆☆☆☆☆




 目を覚ますと、そこは暗い森の中だった。

 森には魔物がいる。

 隙を見せないためにも慌てて起きあがろうとするが……身体が動かない。


 視線を胴体に向けると、腹部に大きな穴が空いていた。


「……くそ、失敗だ」


 転移魔法はそこにある距離を0にするもの。

 従来の属性魔法とはわけが違う代物である。

 未完成のまま使えば何が起こるか予想もつかない。

 四肢の欠損や脳機能への影響、そのまま身体がどこかへ消えてしまうことすらあり得た。


 実際に使った結果、横腹に風穴が空くことになったのだが、これは良い方なのか悪い方なのか。


 私は回復魔法は使えないので、このまま動かなければ生きたまま魔物に食われるか、失血死した後魔物に食われるかだ。


「……あはは」


 自嘲の笑いが溢れる。


 風の大魔法使いといわれた女が、一人の子どもすら守れなかった。

 そして、決死の魔法も失敗。


 着実に迫る死に、悔しさが爆発する。


「う、うぅ……! あぁぁぁぁぁっっ!!」


 もっとしっかり防備を固めていれば。

 奴隷と主人じゃなく、対等な関係で過ごせることに浮かれずに、油断していなければ。

 私に、単体で奴らを倒す力があれば……。


 浮いては沈む悔恨。

 それが落ち着くと、次に来るのは恐怖。


「……こわい」


 さっきまでのあたたかな日常から、一人誰にも知られずに死ぬ恐怖。

 ノアくんが今どうなっているかという不安。

 ノアくんと離れ離れになってしまった寂しさ。

 着実に近くなっている死に、身体が震える。


「いやだ……死にたくない……。ノアくんともっとやりたいことがある……。あいつらにノアくんを取られたままでいられない……まだ死なないんだ……」


 掴んでいたはずの幸せが、どんどん遠ざかって行く。

 強気の言葉も、自らを奮い立たせる意味合いしかなかった。




 事態は好転することはなく、じわじわと赤い血が地面に広がって行く。


 身体も体温がみるみる下がっていき、視界もぼやけてきた。


 流石の私も、少し自分の死を受け入れつつあった。





「……ご、めんね……」




 最後に浮かぶのは、魔法の才能抜きの本当の私を見てくれた男の子、ノアの姿。




「……の、あ……」




 眠るように、意識が沈んで行く。





 その時だった。






「ーーーおや? こんなところに人間が……。ふむ、これはなかなか」



 そんな声が、聞こえた気がした。








 ☆☆☆☆☆☆


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