第46話価値観
「って感じ。火の大魔法使いなんて大層な肩書きがあるけど、実際は勇者パーティに入ったから貰えた称号で、そんな実力なんてないし、魔法も不自由な半端者なんだ。親からもどんどん失望されていって……ここでも勇者に弄ばれて……」
俺を抱く手に力がこもる。
「……全くわからない」
残念ながら、俺には勇者の話以外、彼女の悩みを共感することはできなかった。
「え……」
「俺はむしろお前が羨ましいよ。火の魔法の才能に恵まれて、それに悩むことができるのだって、周りに比較されることだって自分に金や地位があるから、生活に余裕があるからできることだ。他人の魔法に影響を受けることなんて、魔法を発展させる絶好の機会だろ。悪いが、俺はその悩みが贅沢だと思えて共感できない」
親に自分の子ではないと言われて奴隷に売られ、自分の力で敵を倒せるような才能もなかった俺がそれに同調することはできない。
「贅沢な悩み、か……。キミも、この悩みは分かってくれないか」
フレアは落胆したように呟く。
「ああ、俺には理解できない悩みもあるんだと思う。そりゃ環境が違えば考え方も価値観も変わるからな。俺だって最近いろいろな人と関わって、毎日変わってるし、成長してると感じてる」
「うん……」
「まあ、平民で貴族嫌いな俺がそもそ共感できるわけがない」
文字通り、平民と貴族では住む世界が違うのだ。
でも、思うことはあった。
「ただ、聞いて感じたのは、フレアには経験が足りないんじゃないか? 普通の人間が経験することに使う時間を、魔法に費やしてきたんだろ? そりゃ知らないことも多いだろうし、人生経験も少ない。だから自分の想像は限定的になる。強さだけじゃなくて、その貴族間で評価される魔法が使いたいなら、もっと世界を見て回って、自分の幅を広げてもいいと思う」
俺個人としては美しさなんてものよりも、強さが欲しいが。
「もっと、いろんなことを知る……」
「なんて、俺も今その途中なんだけどな」
偉そうに話す権利なんて俺にはないけど。
「……あはは、全然説得力ないね」
「……うるさいな」
少し雑に頭を撫で回される。
「嘘だよ。言われて気づいた、確かにあたしは魔法のことばかりに時間を費やしていて、外のことなんてあんまり知らない。特に平民がどんな暮らしをしていて、どんなものを見ているかなんて、勇者パーティに入ってから少し感じた程度だった。……そうだね、風の大魔法使い様は自由奔放な方だって聞いていたんだ。あの魔法や発想はそういうところからだったのかもね……」
「ま、試しにいろいろ経験してみるといいんじゃないか? ちょっと脇道に逸れたって、誰も責めないよ」
「……責められたら?」
「ほっとけ。自分のためにならない意見なんて無視したらいいよ、結果で黙らせれば」
「……うん……。やっぱりいい子だね、ノア」
フレアはそれっきり口を開かなかった。
肩口が少し冷たかったのは、気のせいだろう。
別にフレアを信用とかしたわけじゃないが、カレンの少ない友人だろうし、俺自身気にかけてもらっているように感じる。
そんな人の悩みくらい、聞いてもいいだろう。
俺は心地よい暖かさのなか、朝まで見張りを続けた。
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