第40話魔族
ざっと、カレンと勇者の話、リオラ姉ちゃんの話、そして今までの出来事を話し終わった。
別に俺にメディアス家をぶち壊そうとか、取り入って操ろうとかそういう考えはない。
ただ、リオラ姉ちゃんを殺した魔法使いに復讐をすることくらいしか、ぱっとやりたいことは思い浮かばない。
カレンたちと住んでいた街の奴らは、数が多すぎるし裏切られたって感情が強く、関わりたくない気持ちの方が大きい。
もちろん不幸になっているのなら嬉しいが。
ちなみに俺が子どもに優しいのは、子どもに罪はないと考えているほかに、実の姉妹の存在も影響していたりする。
「のあきゅん……」
「むぅ……」
マテウスとアンナは、話の途中から涙を流していた。
親として何か思うところがあったのだろうか。
「のあきゅんに私が愛情を教えてあげるから〜! 理解するまで離さないわよぅ〜」
「すまない……。君のことを知るためだとはいえ、もっとお互いを知ってから聞くべきだった。正直、君がそんな過去を背負って生きているとは考えてもなかったし、話そうとしないのも意地を張っているか、我々の敵であるからなのかと考えていた」
話してくれてありがとう、とマテウスは付け加える。
「お父様、この子は私を騙そうとする人ではないし、裏切ったりもしないわよ」
「うむ……。話に矛盾はないし、嘘を言っているようには見えない。ミーシアの奴隷になってからの態度も納得がいく。認めよう」
「……どうも」
過去のことを話すと、毎回気分が沈む。
「のあさまぁぁぁぁ!」
「のーっ!」
「う"っ……」
ばたん、と扉が開き、ルナトリアとリリムちゃんが俺に抱きつく。
特にリリムちゃんが頭から飛び込んできたのが効いた。
苦しい! ミーシア助けてくれ!
「……お父様、ユリアお姉様は?」
俺を無視して問いかけたミーシア。
マテウスは苦々しい表情をする。
「体調不良だ。最近調子が悪く、気持ちも沈んでいる。なにかあったのか聞いても答えてくれない」
「お姉様が……」
ミーシアの姉ユリアは数回だけ会ったことがあるが、明るい性格をしていた気がする。
その彼女が落ち込んでいる姿はあんまり想像できなかった。
「お前と会えば気分が晴れるかもしれない。会いに行ってあげてくれ」
「ええ、そうするわ」
そうして、俺の圧迫面接が終わった。
「それと、君に王命が降っている」
俺と国王に接点などないし、もちろん会ったこともない。
そんな人間にわざわざ国王が命令をする内容がいったい何なのか。
もしかしたら向こうはダンジョンの件で認知しているのかもしれない。
それ関連ならまだいい。
最悪なのは……
「勇者パーティに参加しろ、とのことだ」
「……」
「あんっ」
無言でアンナのホールドを外し、唯一の出口の扉に走り出す。
だから貴族は嫌いなんだ。人の気持ちを無視して都合のいい道具みたいに扱いやがって。
こうなったらとんずらこいてやろうと一目散に走り抜ける。
「ルナトリア」
「はい」
なんてマテウスとルナトリアの掛け合いが聞こえた時には、俺の足は宙に浮いていた。
「のあさま♡お話は最後まで聞きましょうね」
「んなっ、お前早くなってない!?」
有無を言わさず俺を部屋に連れ戻し、ルナトリアの体という鎖に繋がれて俺は逃げる術を失う。
「落ち着いて話を聞いてくれ、王命は絶対だ。特になんの後ろ盾もない君なら意見すら許されない。それでもいいなら逃げてもいいぞ」
「……」
逃げられないんですけど。
「だが、私は公爵家で、君はその娘の奴隷。公爵家が所有権を持っているということになる」
「口添えでもしてくれるのか?」
「多少なら融通は利く」
「うーん……」
勇者はいきなり殺しにかかってくる狂人だし、カレンとは会いたくない。
あいつも俺を殺そうとしてたし、何してくるか分からないからな。
多少融通が利いたところでって感じだ。
「あと、君の話を聞いて、有用な情報ではないかと思ったんだが」
俺の過去に関係のある話なのか?
リオラ姉ちゃんを殺したやつの情報だと嬉しいが。
「勇者が敗れた魔族が、亡くなったと思われていた風の大魔法使いリオラではないかという話だ」
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