第14話 家族会議
その晩の家族会議は紛糾していた。
話題は、受け取った時計の意味だけにとどまらなかった。
「あちらの真意がわからないのに、こちらから牽制も何もないだろ」
お兄様がお父様に反論していた。
「時計一つで騒ぎすぎよ。あちらからしてみれば、たいした金額ではないのだから」
それを言うお母様は、私をしっかりと抱き寄せながらソファーに座っていた。
私も、時計一つで大げさだと思っていたい。
「帝国にユーリアを渡す気など毛頭ないからな」
「気が早いって、親父」
流石にそれは話が飛躍しすぎだと思う。
けど、お父様がそう言うのには理由があるようだった。
「せっかく、ユーリアと暮らせるようになったというのに。ユーリアが病に侵されたのは、そもそも王太子殿下が勝手な行動をとった結果だ。それを、人質同然にユーリアを王都に連れて行き、事あるごとに金銭を我々に要求し」
「あの頃の王家は、無茶な軍備の増強で財政を悪化させていたからねぇ。ライネ家は、豊富な金の鉱山をいくつも領内に持っている。それをアテにして」
同席していたライサの母親であるガーネット叔母様が、肩をすくめながら付け足した。
知らないままの方がよかったことが聞こえてきた。
私の行動のせいで、あの後、我が家はつけ込まれてしまったのか。
でも、ミハイル様を助けられたことは後悔していない。
この場でそれを言える雰囲気ではないけど。
「あちらもそうなのではないのか?」
「いや、グリーン卿はそんな方ではない」
お兄様はキャルム様と親交がある分、どんな方なのかわかっているからお父様の言葉を否定しているのだ。
「皇帝から言い付かったのではないのか?勅命のためなら、いくらでも猿芝居を演じるであろう。皇族ならな!」
「親父!」
「皇族!?皇族って、グリーン卿がですか!?」
私がそれを叫んだ途端に、お父様とお兄様が同時に視線を逸らしていた。
「ミハイル王太子殿下も人柄は評価されていたのに、結局、ユーリアを捨てたもの同然ではないか」
「あなた、ユーリアの前でやめてください。言葉には気を付けて」
「すまん……」
私は、色々と知らなすぎたようだった。
「申し訳ありません、お父様。家が置かれる状況も考えずに……私があの時、王太子殿下をお止めできていれば……」
「いや、殿下をお助けできなければ、逆に責任をなすりつけられていたはずだ。そして、年下の少女であったお前に、殿下を止める義務はない」
「あの、そう言えば、あの時どうして国境沿いに騎士団や神殿騎士団が集まっていたのです?」
それを聞いた途端に、その場にいた全員がピタリと口をつぐんだ。
「その話題は、今ではタブーとなっている」
お父様が、重々しく口を開いた。
「それはどのような意味で?」
「誰も、何も思い出せないからだ。明白な説明をできるものがいない。だから、あの日、国境に神殿騎士団や王立騎士団がいたことは、無かったことになっている」
「国が大規模な出征を行なったのに、そんな事があり得るのですか?」
「そのように王が命じられたのだ。緘口令が敷かれている」
「知りませんでした……」
「お前は城に閉じ込められていたからな」
「と、とにかくだ!俺がキャルム様と連絡を取ってみるから、ユーリアは当たり障りのないお礼を伝えておいたらいい」
「はい」
この場ではそれが最善のようなので、お兄様がまとめた事に従うつもりであった。
大きな疑問を残すことにはなったけど。
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