第9話 Sランク教師、指導開始──そして即心折れる

学園全体が“リオ=危険物”だと認識し始めて数日後。


Sランク教師・ゼクト=ヴァルガが、職員室で腕を組んだ。


ゼクト「……Fランクの少年。あいつを放置しておくのは危険すぎる」


教師A「いや、危険なのは主に周囲が……」


ゼクト「強すぎる力の暴走は、災害だ。

だからこそ、私が鍛える!」


教師B「自信満々だ……」


ゼクト「Sランクの私なら制御方法を教えられる。

──よし、呼んでこい。リオを!」


◆リオ、Sランク教師に呼ばれる


リオ「ひ、ひえぇ……お叱りですか……?僕、弱いのにいろいろ壊しちゃって……」


ゼクト「違う。指導してやる。

まずは訓練場で実力を見せてもらう」


ミリア「呼ばれた……!?」


ルシア「どうせまた大惨事……」


◆◆ 第一段階:魔力放出テスト


ゼクト「リオ。軽く魔力を放出してみろ。

そうだな……“10%”くらいでいい」


リオ「はい!でも弱いので、ちょっとだけ……」


ゼクト(弱い……?また始まったか)


リオ「えいっ」


ボォォォォォッ!!


訓練場の地面が波打ち、空気が震える。

風が台風のように巻き起こり、砂埃が渦を巻いた。


ゼクト「がっ……!?」


吹き飛ばされるSランク教師。


ミリア「……軽く吹き飛びましたね」

ルシア「(まただ……)」

Cランク「うわあああ!!あいつSランク……!!」


リオ「ご、ごめんなさい!弱すぎて風が暴れ……!」


ゼクト「違う!!逆だ!!」


◆◆ 第二段階:魔法発動テスト


ゼクト「……いいか、リオ。

次は 一番弱い魔法 を使ってみろ」


リオ「はい!いちばん弱いやつ……じゃあ《ライト》!」


小さな光を出すだけの初級中の初級魔法。


ゼクト(これなら大丈夫だろう……)


リオ「いきます!」


ポッ。


光が点灯──した瞬間。


訓練場の照明が全部ショートして消灯。

遠くの空に巨大な光柱が上がった。


ゼクト「な、なぜ《ライト》で外の雲が割れる!?」


ミリア「もはや天変地異」

ルシア「(なぜ光だけで大災害……?)」


リオ「ご、ごめんなさい、弱すぎて……光が怖がったのかも……」


ゼクト「怖がるのは周囲の方だ!!」


◆◆ 第三段階:教師によるデモンストレーション


ゼクト「……分かった。

君が強いというのはよく分かった。

なら今度は私が“本気の一撃”を見せる。

リオ、これを見て制御を学ぶんだ!」


ミリア「本気……?」

ルシア「(死亡フラグ…)」


ゼクト「《バーン・ノヴァ》!!」


Sランクの極大魔法。

訓練場の空が真っ赤に染まり、灼熱の炎がリオへと迫る。


Cランク「ぎゃああああ!先生、殺す気だー!!」

ミリア「いや負けるのは魔法の方だから安心しなさい」

ルシア「(確実にそう)」


炎が迫る。


リオ「ひぇぇぇぇ!!」


バッ。


リオが“手を前に出す”。


ボンッ。


炎の塊が、泡のように膨張し──

ポン、と弾けて消えた。


風すら残さず。


ゼクト「……………………え?」


ミリア「消滅しましたね」

ルシア「(また自然消滅……)」

Cランク「先生の奥義が“泡”になった……?」


リオ「ご、ごめんなさい!僕、受け身下手で……」


ゼクト「違う!!違う……!!」


◆◆ 心折れイベント


ゼクトは膝をついた。


ゼクト「私は……Sランクだぞ……?

王国でも五本の指に入る魔法士だぞ……?」


リオ「すごい!僕なんか……弱すぎて、先生に迷惑ばかりで……」


ゼクト「弱い!?弱いって何だ!?

私の全力奥義を“軽く触って”消した少年が弱いだと!?

君は……君は……!!」


リオ「えっ、僕そんなに弱かったんですか!?」


ゼクト「逆ッ!!!!!!(絶叫)」


ミリア「先生の心が折れましたね」

ルシア「まあ……そうなるわよね……」


◆◆ 最終判定


ゼクトはフラフラしながら学園長室へ。


バルド「どうだった?」


ゼクト「無理です。

鍛えるとか指導するとか……以前の問題です。

アレは……“概念”です」


バルド「が……概念?」


ゼクト「魔法じゃなく、運動じゃなく、戦闘じゃなく……

“存在そのものが災害クラス”なんです……」


バルド「…………私もそう思っていた」


◆◆ そしてリオは……


リオ「今日はいっぱい怒られなかった!よかった……

僕、もっと弱くなれるよう努力します!」


ミリア「その方向で努力しないで!!」

ルシア「(これ以上どう弱くなるんだ……?)」


こうしてまた一人──

Sランク教師がリオへの恐怖の虜 となった。

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