第5話 最強先輩、過保護が行き過ぎて学園崩壊の危機

最近の学園は騒がしい。

いや、正確には──


全部リオのせいで騒がしい。


・FランクがEランク、Dランクに“勝利”

・謎の破壊現象

・魔法が爆ぜずに消滅

・獣舎の魔獣たちがリオを見ると正座する(?)


そんな中で、もっと騒がしい存在がいる。


学園最強、“黒鉄のルシア”先輩である。


◆過保護発動


中庭。

リオが落ち葉を掃き掃除しているだけで──


ルシア「リオッ!危ない!!」


ダッッ!


リオ「えっ!?葉っぱが!?」


ルシア「葉の裏には虫が潜んでいる可能性がある!最弱のお前にとっては脅威だろう!!」


リオ「僕そんなに弱いんだ……!?」


周囲の生徒(いや逆だろ……強すぎるから庇ってるんだろ……)


ルシアはリオのほうきを奪い取り、

ガンガンガンガン!!

超高速で地面を磨き始めた。


リオ「す、すごい……!」


ルシア(この程度の作業でリオを危険に晒せるか……!)


生徒たち(危険の定義が狂ってる……!)


◆授業中も大事件


魔法演習の授業。

生徒同士が軽い攻撃魔法を撃ち合って練習する日だ。


教師「さあ、リオ、君の番だ」


リオ「ひえぇ……僕、弱いけど頑張ります……!」


そのとき。


ルシア「待て。」


教室が静まった。


ルシア「リオが魔法を撃つ必要はない。全員、身を守れ。」


教師「な、なぜ……?」


ルシア「リオが攻撃魔法を撃てば──」


全員「撃てば……?」


ルシア「……学園が消し飛ぶ」


リオ「えっ!?僕そんな弱いんですか!?!?」


教師「弱いの意味が分からん!!!!」


◆学園中の誤解が加速


ルシア先輩がリオを守るたびに、学園の噂はこう変化していった。


・“Fランクの少年は学園最強より強いらしい”

・“いや、世界最強を超えてるらしい”

・“もはや魔王を超えてるらしい”(魔王いないのに)

・“リオが本気を出すと大陸が割れる”(誰だそんなこと言ったの)


リオ(僕、そんなに弱いのに……?)


誤解だけが一方的に膨らむ。


◆ついにルシア、過剰防衛に出る


廊下を歩くだけのリオ。


その背後で──


ルシア「通るぞ!!リオの通り道を確保しろ!!」


騎士団みたいな勢いで生徒たちをかき分ける。


生徒A「え、え!?なにこの護衛態勢!?」


生徒B「うわ、最強のルシア先輩が……Fランクの後輩を護衛してる……!」


生徒C「絶対に怒らせちゃいけないやつじゃん……!!」


リオ「せ、先輩!?僕そんなに弱い通行人だったんですか!?」


ルシア(いや逆だ……!逆なんだが……!)


◆事件発生(※大した事件じゃない)


Dランクの男子が、廊下で転んでバケツをぶちまけた。


ガシャーン!!


水が飛び散る。


リオ「うわわっ!?」


ルシア「危ない!!」


次の瞬間──


ルシアがリオを抱きかかえ、3メートル跳んで避けた。


周囲(身体能力どうなってんの)


リオ「あ、あの……水……」


ルシア「水など浴びたら風邪をひく可能性がある。最弱のお前には危険すぎる」


リオ「ぼ、僕、そんなに虚弱なんだ……」


Dランク男子(俺のバケツ……命より重い扱いされてる……?)


◆職員会議が大炎上


その日の会議。


教師A「ルシアがリオくんに対して過保護すぎます!」


教師B「おかげで学園全体が萎縮しています!」


教師C「そもそもリオくんは本当に弱いのか……?」


教師D「いやむしろ最強なのでは……?」


校長「……君たち、はっきりしなさい」


教師全員「分かりません!!!!」


校長「ですよねぇ!!」


職員会議はカオスの極みだった。


◆そして、学園の結論はこうなった


・リオをむやみに刺激してはならない

・ルシア先輩はリオの保護者として扱う

・授業は可能な限りリオから離れて行う

・中庭の使用はリオのいない時間帯に限定

・“弱い”というリオの自己評価は否定してはいけない(精神衛生上)


リオ「ぼ、僕ってそんなに扱いづらい最弱だったんだ……」


(全員:最強だからだよ!!)


こうして学園の秩序は今日も崩壊し続けるのだった──。

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