第4話 あれも、ええ加減なおっさんでなぁ・・・

 小佐木島から帰りのフェリーに乗って帰る途中、とある船員さんとお話する機会に恵まれました。


「風の子学園の坂井(幸夫)被告人ですが、どんな人物だったのでしょうか?」


 そんな質問をした記憶があります。

 それに対して、当時40代くらいと思われる、まあ、私からしてみれば親世代くらいの船員さんが言うには、こう。


「まあ、ええ加減なおっさんでなぁ、500万か1000万と言っておった借金が、気付いたら3000万になっておったといった調子で、な、それで・・・」


 まあ正直、いい迷惑だったと言わんばかりのお話でしたな。

 詳しい内容は覚えていませんが、坂井園長の「借金」の話になったことは、なぜか今に至るまで、覚えています。何と言っても、その船員さんの「おっさん」という表現だけは、忘れもせんのですよ。


 ともあれ、三原港に戻って、特に何か食べたり飲んだりした記憶も、ないのね。

 あとはひたすら、昼頃か昼過ぎには、岡山に戻ってきていました。

 帰りの電車の記憶も、一切、ないです。

 昼に帰って何を食べたとか、何していたかも、もう、記憶にないのよね。

 ただし、その日の夕方には、街中の行きつけのスナックに行って、大いにカラオケを歌いながら飲んでいました。その日は、通信制高校の先生と生徒さんがスクーリングを終えての懇親会を兼ねて、大いに盛り上がっておられたのを覚えています。

 いやあ、第一、写真、残っていましてね(苦笑)。


 そういえば当時はまだ、今のような短髪にしておりませんで、確か、何やらの整髪料をぬって、髪を整えていました。ポマードだったかもしれん。

 なんでポマードかというと、「口裂け女対策」ということで(苦笑)。

 もう一つ、この日着ていたスーツやネクタイなどはさすがに今はもうありませんけれども、カフスボタンは、現役です。

 この1か月ほど前に雲仙に旅行に行く機会がありまして、そこの旅館の売店で、確か1500円か2000円くらいで買った覚えがあります。

 20代前半の大学生にしてはちょっとな、って感じでしたが、きょうび50代にもなると、かえって、サマになっているような気もしないじゃないね。


 この後、風の子学園事件の裁判は数年来にわたって継続しました。

 私自身は、その後大学を卒業し、司法試験の勉強をしているはずがいつの間にやら学習塾講師となり、それどころじゃないってことで、すっかり忘れたわけでもないのですが、裁判の状況を追っかけられるほどのゆとりがなかったことは、確かです。

 結果的には、広島地裁福山支部では風の子学園元園長の坂井幸夫被告人に懲役6年の実刑判決が下ったものの、すでにそのくらいの拘留期間が継続していたこと、それに加えて高齢で病気も云々ということもあってか、未決拘留日数が刑に算入されたこともあったのでしょうか、控訴審で懲役5年が確定しました。

 この度坂井氏は、「刑務所」には行かぬまま釈放されたようです。


 その坂井幸夫氏なる人物がその後どうなったかはわからぬままでしたが、私が塾を経営し始めて数年経った2001年頃、これまたとんだ事件で彼を知ることに。

 何と、ボランティア活動で知り合った女子高生にわいせつ行為をしたとして、この坂井幸夫氏が逮捕されたというではありませんか。

 同姓同名の別人ではなく、明らかに同一人物でした。

 彼はその後、懲役2年の実刑判決を食らって、今度こそ、服役されたようです。


 その後の坂井幸夫氏の消息は、当方では一切不明です。当時の報道から見て、もし現在存命だとしても100歳には至っていないので、生きておられる可能性もないわけではなかろうが、おそらく、その可能性は低いでしょうな。

 ま、年齢的には、今朝訃報の入った英国のエリザベス二世女王の夫気味で既に鬼籍に入られたエディンバラ公フィリップ殿下と同年代くらいですから、そりゃあ、かの坂井氏も、亡くなられていて全然不思議ではない。


 いくら日本では、死者は皆仏と申すにせよ、この坂井某なる人物の冥福を祈る気には、なれません。愛想なしどころか人でなしみたいで申し訳ないけど。

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