【コミックス1巻&書籍2巻発売記念SS】『とある白銀の祝祭に』
『とある白銀の祝祭に』episode01:義弟からのお誘い
『国外追放された王女は、敵国の氷の王に溺愛される』を読んでいただきましてありがとうございます。
本作につきまして、12/13(金)に書籍2巻が、そして12/17(火)にコミックス1巻が発売となりました!
1年間の間に書籍を2冊出せただけでも非常にありがたい話であるにもかかわらず、まさかコミックスほぼ同時発売です!
近況ノートにリンクが貼って貼りますので、ご興味あります方はぜひぜひです!!
コミックスは特典もあるらしいです。(特典欲しさに、私はものすごい勢いで買いました。早く届かないかな〜)
近況ノートはこちら
https://kakuyomu.jp/users/zofui0424/news/16818093090263251202
そして、コミックス1巻と書籍2巻の発売を記念して、SSを書きました。
今回は、みんなで楽しくわちゃわちゃするお話です。
書籍発売日から、コミックス発売日まで、5日間更新しますので楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。
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「義姉上! 料理を作りませんか?」
私、ジョジュ・ヒッテーヌがロニーノ王国へ輿入れしてから半年。戴冠式が終わったばかりの頃だった。
窓の外にふんわりとした雪がチラチラと降っている午後に、義弟のガルスニエル・レックスから、突然のお誘いを受けた。
白と黒の毛並みを持つ少年の愛犬フランは、嬉しそうに飛び跳ねながら私の方へと駆け寄ってくる。
「ジョジュ様のお部屋に入る時は、ちゃんとノックをしなくちゃいけないのよ、ガルスニエル。またバルジャン公爵に叱られったって知らないんだから」
後から追いかけて来たらしい。義弟の婚約者であるアルム・オルテル公爵令嬢が、息を切らしてガルスニエルに注意した。
少年は、ぶつくさと文句を言いながらも、一歩後ろに下がってコンコンと開いたままの扉をノックして「失礼いたします」とやり直しをした。どうやら、お目付役のバルジャン公爵に叱られるのは怖いらしい。
「ところで、突然料理だなんてどうしたの?」
椅子に腰掛けるよう促した後、私は瞳を輝かせている少年と少女へ尋ねた。
「女神の祝祭です!」
椅子から少し腰を浮かせて、ガルスニエルは即答した。
ロニーノ王国では、少女神サイヤという神を信仰している。その少女神を中心として火の女神、草の女神、水の女神、大地の女神と四つの女神が少女を支えているらしい。
少年が言っているのは、その四つの女神が少女サイヤを祝福した日を記念した祝日のことを指しているようだ。
「ロニーノ王国で女神の祝祭の日には、家族ならではの料理を作って一緒に食べるのが主流なんですよ。ですよね、殿下」
「その通りだ。フローラ」
気を利かせたフローラが温かい紅茶を淹れてくれたので、私は湯気がたっているカップにそっと手を添える。ひんやりしていた手先が、じんわりと温まっていくのを感じた。
「そうだったのね。知らなかったわ。ところで、どのような料理を作るの?」
私が質問をすると、少年と少女は顔を見合わせて俯いてしまった。
どうやら料理を作るといった発案をしたまではいいものの、どのような料理を作るかまでは考えていなかったらしい。
「毎年ニックス城では、料理長がご馳走を作って、晩餐会を開催しております。伝統に基づくのでしたら、鹿肉の煮込みや飾りをふんだんに使ったバターケーキ、それに骨付きソーセージなどが主流ですわね」
「でもね、フローラ。それはお城のでしょう? 晩餐会はいつも大人たちで楽しんで終わってしまうもの。ガルスニエルは、個別にみんなで時間を作って女神の祝祭をやりたいのよ。それに、ジョジュ様たちは結婚したばかりだから一年目の家族だし、伝統がないでしょう」
言葉を探しているガルスニエルの気持ちを察してか、アルムが口を挟んだ。
「そういうことだったのね。私は、もちろん大賛成よ。せっかく家族の仲間入りをさせてもらったんだもの。ぜひみんなで祝祭を祝いたいわ」
私が好意的に答えたことで、俯いていたガルスニエルの表情がパッと明るくなった。
「義姉上、よろしいのですか?」
「もちろんよ。陛下にもお願いしてみましょう」
ガルスニエルとアルム、そしてフランと共に私は、エミリオンの書斎へと向かった。ちょうど会議が終わったばかりのようで、部屋の前で集まっている私たちを発見した夫は、驚いたような表情を浮かべたあと「何かあったのか?」と静かに尋ねた。
書斎の中へ入ると、ガルスニエルが嬉々とした様子で、エミリオンに祝祭の日の料理を家族みんなで作る計画を話した。
「義姉上は一緒に作るとおっしゃりました! 兄上も参加してくださいますよね?」
「わかった。いいだろう」
エミリオンが許可を出してくれたので、嬉しそうにはしゃぐガルスニエルに
「よかったわね、ガルスニエル」とアルムが優しく微笑むのだった。
その後、エミリオンは急な伝達が入ってしまった。戴冠式前に起こった事件の件で急ぎの報告があったらしい。子供たちに聞かせる話でもないので、私はガルスニエルたちを自分の部屋へと連れて帰ることにした。
「祝祭の日は、必ず予定をあけよう」と約束してくれたので、義弟たちと、どのような料理を作るのか先に決めておこうといった話になったのだ。
「兄上は、ああ見えて実はかなりの甘党なので果実を砂糖で煮込んだパイは必須です。僕は、育ち盛りなので、骨付き肉とかを入れたいです。義姉上は、何が好きですか?」
ガルスニエルに尋ねられて、私は考え込んでしまった。
祖国ドルマン王国の王宮では、大皿に少しばかりの手の込んだ料理ばかりが並べられていた。味も美味しいとは思うのだが、どれもわざわざ作ってみんなで食べたいかと言われたら難しいところである。
反対にロニーノ王国に来てからは、大皿にたくさんの料理が並んでおり、それぞれ食べたいだけ取り分けてもらうことが多い。その中でも、絶品だなと思えたのはジュンヌ地方の卵料理だったが、家族で祝う祭日に卵料理を選んでいいものなのだろうか。
「難しいわね。ちなみにアルムのお家では何を作って食べるの?」
私が尋ねると、アルムは「私の家は、伝統料理を料理人が作ってくれるから、お母様と一緒にケーキやクッキーを焼いたりして食べるの。お母様の作るお菓子はとても美味しいのよ」と答えてくれた。
アルムの母であるマリアンヌ・オルテルは、私の女官として働いてくれている。マリアンヌが開催しているお茶会ではよく彼女の手作りの焼き菓子が出ると評判であったことを思い出した。
私が祖国から追放された理由が『お茶会での事件』ということもあって、気を遣って誘われることがあまりないが。
「そうなのね。でも、お菓子は、陛下のパイがあるから他のものがよさそうよね」
「サラダなどはいかがですか? ジュンヌ地方の卵を使ったゆで卵や、漁村ネスコから届いたサーモンなどを使ったサラダは、栄養面でも卓上の華やかさにもよろしいのではないでしょうか」
口を挟んだのはフローラだった。
「素敵な提案だわ。卵にそのような使い方があったなんて」
「ふふ。ジョジュ様、実はジュンヌ地方の卵お好きですものね」
ロニーノ王国に来てから、ほとんどの時間を一緒に過ごしている侍女に、私がジュンヌ地方の卵を使いたいと思っていたことはお見通しだったらしい。
「義姉上は、卵とサーモンを使ったサラダっと……」
ガルスニエルが、計画を紙の上に不器用な文字で「卵とサーモンのサラダ」と記載する。
その後もみんなで相談しながら、卵とサーモンのサラダに、骨付き肉、クリームスープにビジベリーの果実パイを作ることが決定した。これ以上メニューが多いと作るのも大変だろうということで、他にも料理の候補が上がっていたが、この四つのメニューになったのである。
問題は、その食材をどうやって仕入れるかであった。城の貯蔵庫の中に、食材は保管されている。そこから使うことは問題ないだろう。
しかし、ガルスニエルが「自分たちで買い物に行きたい」と言い始めたのだ。これについては、私が勝手に許可をすることができない。
結局、夕食の時にエミリオンに確認を取り、許可を得たら自分たちで仕入れることにした。
アルムが公爵邸に帰って行き、夕食の席についた時、意外にもエミリオンは「いいだろう」と許可をくれた。
「よろしいのですか?」
思わず席を立って尋ねたのは、ガルスニエルだった。普段は厳格な兄が、城の外へ出かける許可をくれるとは夢にも思っていなかったのだろう。
「ガルスニエル。席につけ」
「申し訳ありません。兄上」
エミリオンはガルスニエルが席に座り直したのを確認すると、私の方へと視線を向けた。
「民の暮らしを知るのも、ガルスニエルには必要な経験だ。ジョジュ、あなたも同行してくれるか?」
「ええ、もちろんですわ。陛下も一緒にいらっしゃるのですか?」
私の質問にエミリオンは「もちろんだ。あなたと家族になってはじめての行事だからな」と答えた。その口調がなんだかとても優しくて、心の中がじんわりとあたたかくなった。
ガルスニエルは、そわそわした様子で私とエミリオンの方を何度も交互に見比べた。
「出かけるのは、いつですか? 明日ですか? 兄上!」
「予定表を確認しないと、なんとも言えないな。フローラ、全員の都合が合う日を確認してきてくれないか?」
「承知しました」
フローラが、すぐに予定を確認しに行く。戻ってきた彼女の報告によると、ちょうど祝祭の当日までは、全員の都合が合わないとのことだ。前日の昼間も都合がついたのだが、城で祝祭の晩餐会が行われるので、それらの準備で忙しいので難しいだろう。
祝祭まで残り二週間もあったので、喜んでいたガルスニエルは残念そうな表情を浮かべて、椅子の背もたれにもたれかかってしまった。自分の食事を終えた少年の愛犬フランが、落ち込んでいる親友の周りを心配そうな表情を浮かべてぐるぐるまわっている。
「残り時間が思ったより多いのはいいことだわ。私たちだけでやるのもいいけれど、他の方も招待するのはいかがかしら?」
私が提案するとエミリオンも「そうだな。誰か呼びたい人はいるのか?」と弟に声をかけた。
「アルムは絶対に呼びたいです!」
自分の婚約者であり親友の名前をあげた。アルムは家族で祝祭をすると言っていたので、両親に確認する必要があるだろう。
「陛下、私からも招待したい方がいらっしゃるのですが」
アルムを呼ぶのであれば、他にも呼ぶべき人がいるだろうといった考えが浮かんだので、私は夫に尋ねた。
「かまわん。招待状などは任せてしまっていいか?」
「ええ。一緒に買い物したり、料理を作るのを楽しみにしておりますわ」
「私もだ」
こうして、私たちは家族ではじめての行事を一緒に行うことになったのであった。
Episode02へ続く→
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