第12話 見惚れてしまうほどに。



     〇



 それは、突然の出来事だった。

 かなり腕の立つ冒険者たちに襲撃しゅうげきされ、命の危険にさらされていた時。

 何の前触れもなく巨大なつるが彼らを襲い、全てをねじ切ってしまった。

 唖然とする俺の前に現れたのは、下半身が花の女性……いや、人型の魔物だ。

 だが、俺と同じがする。

 どちらかといえば、当然の場所から外れているような、そんな感覚。

 はぐれもの、というらしい。

 冒険者の一人が、俺を見て、そう話していた。

 ここでの鍛錬で五感も鍛えられていたおかげなのか、言葉も理解できるようになっているのはありがたい……。

 俺は、本当にゴブリンなのだろうか。


『…………?』


 気が付けば、花の魔物は眼前にまで近づいていた。

 身構えようとしたが、なぜなのか、俺はまったくもって警戒しなかった。

 その人の形をした花の魔物が、俺を心配してくれているのが、なぜか理解できる。

 先の深い思考もそうだ。

 彼女が俺を襲わないとからだ。

 何なのだろうか、これは。

 俺の過去?……俺はやはりゴブリンではないのか?

 だが、見目は間違いなく、この特性も間違いなく、ゴブリンのそれだ。

 肉体も鍛え上げていても技を磨いても、人のそれではない。

 ……なんで人であることが前提なんだ?

 俺は――。


『……!』


 顔を両の手で掴まれた。

 否が応でも、彼女と真正面から向き合うようになってしまった。

 花の魔物の彼女の見目は、美しかった。


 見惚みとれてしまうほどに。

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