第4話

 はっと意識が覚醒して、わたしは体を起こした。

 眠っていたのはふかふかの上質なベッドの上。

 高さもややあるようだ。

 明らかに、今まで住んでいたアパートではない。

 

 では、ここはどこ?


「ヤマダさま、お疲れさまでした」

 声に驚きベッドの左右に見ると、両サイドにイケメンがずらりと片膝をついていた。

「うわぁ、なに、あなたたち!」

「お待ちしていました。お帰りなさいませ、ヤマダさま」

 

 広い部屋に豪華なベッド。

 その両側には、片膝をついたイケメン軍団。

 しかも、彼らの顔をよくよく見れば、わたしが10代の頃に好きだったアイドルに似ている。

 ……異世界のリサーチ力、凄し。


 軍団のリーダーと思われる、明るい茶髪の男性が立ち上がる。

「この度は、ヤマダさまに多大なご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。この不始末、この先、わたしたちメンバーで誠心誠意を尽くすことで、ゆるしていただきたいと思うのですが」

 リーダーの言葉を合図に、他のメンバーもすっくと立ち上がる。

 

 なんという景色だ。

 いや、だめだ。

 ゆるすなんてできない。

 わたしは65歳になった自分のハリのない手の甲を見る。

 

 でも……。

 

 再び顔を上げ、彼らの輝くような顔を見る。

 そんな仔犬のようなつぶらな瞳でわたしを見つめてもね、

 ゆるさないんだからね! ―――――多分。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大変申し訳ございません。ヤマダさまは聖女さまではありませんでした! 仲町鹿乃子 @nakamachikanoko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ