第22話反逆の魔女
「ご注文は~」
魔法少女マチルダの母で魔女のリンダさんは予想に反してセミロングの黒髪に色白の、優しそうなお姉さんタイプに見えた。ジーンズに黒いTシャツ、その上にエプロン。
どういう訳だか知らないが、リンダさんは繁華街のアイスクリーム屋で店員として働いていた。
「あたいはチョコミント味。ハルマは?」
「僕は抹茶味」
僕達の注文を聞いたリンダさんは店の奥に向かって「チョコミントと抹茶~」と声を上げてから「ヒサメちゃん、ちょっと休み時間もらってくるね」とエプロンを外し、やがて店外に出てきた。
「ヒサメちゃん、久しぶり~」
笑顔で駆け寄るリンダさん。ヒサメさんはむっつり。
「久しぶりじゃねえよ、おめえの娘とそのマスコットが映画館となりのカラオケボックスの地縛霊みたいになってんじゃんか」
「その前に、カレは?」
リンダさんが僕に目線を向けた。ゾクッとするような色気を感じつつ自己紹介。
「古代ハルマと言います。ヒサメさんとは、なんていうのか」
「あ~、分かった、搾精されてるんだ~、いいな~あたしもヒサメに搾精されてみたい」
「そ、そうですか」
からかわれていることを自覚しつつ妙な相槌しか打てなかった。照れくさい。
「リンダ、話を戻すとさ」
「あ、ごめんごめん、ヒサメちゃん。あたしの娘の話だったわよね。あたしら親子そろって魔法使いの組織から追われてるんだ~。サキュバス追放活動に協力しないから。」
「あたいが言うのも変だけど、なんで組織に逆らってる?」
「だってえ、平和じゃなくない?上下関係もうるさいし、別組織立ち上げたほうがいいかなって思ってるんだけど」
「釘バットで殴りかかってきたくせに。顔に当ったらさすがのあたいもいてえ、ってなるぞ」
「他のコ達がヒサメちゃんの左ジャブで全員倒されちゃったから、あ、本気でやんなきゃと思って」
「そんなこともあった……でもあれから姿消したよな」
「今でも、追われてるのよ」
「娘のマチルダは、そんな様子は無いみたいだけど」
ヒサメさんの言葉を聞いたリンダさんは、ちょっと真面目な顔をした。
「あたしがヒサメ倒せば、組織はこれまでのことチャラにしてくれて、マチルダも中学校に進学出来るのよ、倒されたい?」
「他にやり方はねえのかよ?昔の繰り返し?だせえだろ」
「そう、ダサいのよ。でも、注意してるのに居場所が組織にバレて」
それまで僕はふたりのやりとりを黙って聞いていたが、ちょっと疑問に感じたことがあったので口を開いた。
「リンダさんにはマスコットは居ないんですか?庇ってくれたり話を聞いてくれる的な」
「マスコットなんて居たことがないわ」
「マチルダちゃんにはマスコットが居ますよね?エップスとかいう」
「彼を見たことがあるの?」
「僕にはヒサメさんから魔力が流れ込んでるから、見えたんだと思います」
「じゃなくて、どんな人だった?あたし会ったことないのよ」
リンダさんの言葉に、僕とヒサメさんは顔を見合わせた。
「リンダ、育児放棄にも程があんだろ、七五三祝いとかやってねえから、妙なマスコットが娘についちゃったんじゃねえの?」
「七五三祝いなんて、あたしもやってもらったことない……だって魔女が、変でしょ?」
憂い顔のリンダさんを残して、僕はヒサメさんのマンションに寄り、入鹿コロネも呼び寄せた。
「エップスは、あたしにも危害を加えようとしたわ。組織公認マスコットなのかなって疑問だったんだけど」
「魔法少女マチルダはコロネちゃんの先輩だから、文句がつけられないってこと?」
「年功序列の縦社会だから、あんまり言えない」
「コロネちゃん、あたいはサキュバスで、基本的に魔女や魔法少女に狩られる立場だから、あんま関わり合いになりたくないんだけど」
「ですよね。でもあたしひとりじゃ……先輩の面子も潰すことになるし」
3人で頭を抱えていると、黒のビキニとブーツに三角帽というサービス精神旺盛な姿でリンダさんがすっと姿を現した。
「リンダ、なんでここにたどり着けた?」
にらむヒサメさん。にこっと笑顔を返すリンダさん。
「あたしが出したソフトクリームを、なんの疑問も持たずに食べてくれたから。ヒサメちゃん、ハルマくん貸してくれる?あのくしを今持っているのはカレでしょ」
「貸すも何も、ハルマはあたいのモンじゃねえし」
あ~、やっぱり僕は戦地に赴くのかと緊張した。その時股間に違和感が。
「娘から聞いたわ。こういうの、好きでしょ?さっき食べたソフトクリームは抹茶味だから、今のハルマくんも抹茶味」
魔法のバトンらしき棒をリンダさんが舌で舐めると、僕の股間にもれろっとされる感覚が伝わった。
年上のオンナノコ スリムあおみち @billyt3317
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