怖くて面白い。いややっぱり怖い。

まず文章が上手い。
とにかく文章が上手い。
ともすれば無味乾燥にすら感じかねない淡々とした筆致に、うっすらとした不気味さ、見え隠れする物悲しさ、時にユーモアさえ漂う。
ホラーにありがちな厚塗りの油彩画ではなく(それはそれで良いものだが)、質の良い水彩画のような、絶妙な透明感と上品さを感じさせる。

内容はタイトルの通り、ワケ有り物件住んでみた系なのだが、このワケ有り物件というのがまあ、ワケ有りにも程があると言うか、ワケしかねえよ!とブチ切れるべきか、さっさと取り壊せと言うべきか、いややっぱ怖過ぎて取り壊せんですよねハイ、という怪しい敬語もはみ出るシロモノ。
コミカライズも始まりましたが、文章力の高さによる怖さは視覚化されると矮小化されがちなものだが、彼に関してはそれどころじゃないと言うか、こんな怖いって言ってなかったじゃん詐偽だ!と言うか、あっち読んでこっち読むと著述トリック気分まで味わえて、まさに一粒で二度美味しい。

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