第13話『苦しい胸の内』
集会所から歩いて1分もかからない小川公園。
手作りの木のベンチで膝を抱えるオリーブの姿があった。
時々、思い出したようにしゃくりあげる。
その様子を木の影からタイラーが見守っていた。
オリーブの性格からいって、こうならずに済むとはタイラーも思ってなかった。
彼女のエリックを想う気持ちは深い。
たとえフラれたとしても、それで嫌いになるほど単純じゃない。
レンナの登場で、遠くからエリックを見ていることも出来なくなったオリーブにとって、問題は複雑だ。
それでも、レンナに親身になって接することができるのは、オリーブだからこそだ。
エリックもレンナも大切な仲間。そこは揺るがない。
揺れているのは隠している、オリーブ自身の気持ちだった。
仲間に頼りすぎても頼らなすぎてもいけない、と言ったのはオリーブだが、タイラーに恋人として甘えることはなかった。
というより、友だち以上ですらなかった。
むしろ、仲間の前でタイラーを非難したりして、彼の立場を考えてない。
自分では恋人らしく振舞ってるつもりなのだ。
そこが――かわいい。と、タイラーは思っているのだが。
さて、そろそろいいかな。
オリーブが膝上に両手と顎を載せて、小川を見つめているのを見て近づいていく。
気づいたオリーブがハッとして、涙の跡をこする。
優しい声でタイラーは話しかける。
「……隣に座ってもいいか?」
「……」
オリーブは無言で心持ちちょっとベンチの端に寄る。
「ありがとう、少し落ち着いたか?」
黙って頷くオリーブ。
タイラーは黙ったまま、オリーブが話すのを待った。
小川が真昼の日差しに照らされて、青く輝いているのが見えた。
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