第6話『人類の行方・2』
「俺も一つ思いついたぞ。外見や職業ではわからない、内的反抗因子はどうなんだろうな。社会的にはきちんと生活できても、頭の中は凶悪な思考に充ちているんだ」
ランスが躊躇しながら言った。
「それは……生命の樹的にもNGじゃないでしょうか。今はわからないようになってますけど、オーラやテレパスが盛んになれば自ずとはっきりしますから」
キーツも言った。
「慣れてる僕らはいいけど、これで制御するのに時間がかかってるからね。初めての人でも不穏な思考回路の持ち主は、苦労するのが目に見えてるよね」
ナタルがメモから顔を上げて言った。
「思考って癖と同じでなかなか自分では変えられないじゃないか。かと言って他から促されれば直せるかって言うと、むしろ逆だしね。でも、因果界に往かされたら怒るだろうなぁ。「俺のどこが悪いんだ。ちゃんとまともに生活してただろ」ってな感じで」
「いやぁ、そういう人まで因果界に往かされるとなると、相当数いると思うよ。ブラックな自分なんて誰でも持ってんじゃん」
ポールの言葉にタイラーが返す刀で言った。
「それじゃ元の木阿弥だろ」
アロンが割って入った。
「だからさ、許容範囲があるわけ。生命の樹的に「この人はきちんと制御できる」。「この人はややもすると危ない」ってさ」
ナタルが眉間に皺を寄せて言った。
「終末論者の呪界法信奉者が飛びつきそうな話だね」
キーツがまとめる。
「どう判断するにせよ、一人ひとりしっかり見てもらえるんならいいんだけどさ」
ルイスも言った。
「俺もいいですか? 引きこもりの人ってどうなんでしょう。一応、万世の秘法では据え置きじゃないですか。生命の樹的にどうなのかなって」
ランスが考えて言った。
「そうですね……やっぱり、いきなり因果界ということはないと思いますよ。彼らに必要なのは、励ましでも状況の改善でもなく時間ですから。世界の大変革でさえ、彼らにとっては重大事ではないのかもしれません」
マルクも言った。
「状況が変わったらパニックになるかもしれないし、俺が生命の樹なら、名のない力をそっと一撫でぐらいにするね」
ポールがすかさず言った。
「もしくは超常現象のスパイス和えとか」
「料理か!」
キーツが突っ込むと、アロンがまとめた。
「まぁ、なんていうか、せっかくのチャンスなんだから、ノッてほしいよね」
「まぁ、な」
マルクも一言置いた。
「でもさ、たまったま世界の大変革にそういう小休止の生活が当たっちゃった人は? 今までのことは相殺されちゃうわけ?」
ポールの発言にアロンが即座に言った。
「いや、それはないだろ。例えば会社リストラされて、次の仕事まで間が空いた時のことだったら、勤務態度も入れてやむを得ないって判断するとかさ」
ポールが両手を後頭部で組んで伸びをした。
「骨休めを無気力と判断されちゃたまんないもんね」
タイラーも言った。
「そういう間違いは犯さないだろ、生命の樹は」
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