第6話『人類の悲願』

「話が脱線したな。つまるところ、名のない力ってのは何だ」

 タイラーが話を元に戻すと、キーツが考えを話す。

「大体想像はつくよね。そのまんま世界にぶつかってくるだけなら、ただ迷惑なだけの力だけど。天窓の鍵を使えば世界構造を変えることができる、変換可能なエネルギー塊ってことでしょ。エネルギーの源って言われてる、生命の樹とは別の」

「天窓の鍵は名のない力をエネルギー変換して生命の樹に組み込むことを可能にするんですね」 

 ランスの言葉に頷くマルク。

「そういうことです。前回、前々回と違って、我々は名のない力を完全に利用する方法を見い出したと言えるんじゃないかな」

 ポールがしたり顔で頷きながら言った。

「それはやっぱり進歩だよね。苦節三千年、苦労した甲斐があった」

「なにそれ」

 キーツが変な顔をする。

「人類を代表して、感想を……」

「いらないから、それ」

「案外言い得ているかもしれませんよ。我々人類は乗り越えようとしていた壁をようやくよじ登って、次のステージに辿り着こうとしているんですから」

「でしょ。みんな同じところでぶつかって跳ね返されてきたんだって。必死になってるうちにさ、訳もわからず躍起になって、身体酷使して頭をフル回転させて、やっと日の目を見たってことだろ。そりゃもう諸手を上げて喜んでいいと思うね」 

 ポールが巻き舌で朗々と述べると、ランスがニコニコして言った。

「同感です」

「だが、そこへいくと代表って何者なんだろうな。人類で唯一人、第五層生命樹界にアクセスできる……尋常じゃないぜ」

 タイラーの考えを、ルイスがやんわりと遮る。

「そうですけど……話して答えは出ませんし、NWSではタブーでしたよね」

「俺はいっそ、外から来た宇宙人ってことで納得しちゃうね。だって、壁をいきなりひとっ飛びで乗り越えちゃったようなもんじゃない。んなの世界の法則にびっちり組み込まれた俺らにゃ、出来ない芸当だよ」

 ポールが言うと、マルクが続く。

「逆に代表がいたから俺たちにも壁の向こうが見えたんじゃないか。「あ、そうやって越えるんだ」みたいな」

「レンナさんをお手本にすれば、いずれは私たちもいろんなことが可能になるかもしれませんよ」

 ランスの言葉を聞くや、ポールがしなを作った。

「側にいられて幸せねぇ」

「ホントよねぇ」

 キーツがノッてくる。

「おまえら、キモい」

 タイラーが嫌そうに言うと、ポールがオカマ風に言った。 

「だって、今も昔も女優勢の世界なんだから、男もカマ掘って近づくのが流行るかもよ。ねぇ?」

「言えてるぅ」

「それなら俺は因果界に残る」

「まっ、これだからタフガイは生き残れないのよ。ツネっちゃおうかしら」

 悪ノリしたポールがタイラーの腕を触った途端、気がついた。

「チキン肌になってやんの」














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