第18話「私の図書館でスキルについて鍛錬しろ」


「あぁ、そりゃスキル覚醒って言うやつだ」


 彼女は淡々とそう言った。

 周りは祝杯を挙げてバカ騒ぎする冒険者ばかり、その傍らで俺たちのテーブルは静かだった。


「ど、どういうことですか?」


「どういうことも何も、スキルってのは一種のギフトみたいなものってことは知ってるよな?」

「そこら辺は一応。磨けば磨くほど、相性がいい程、使いようがものをいうって本で読みましたから」

「あぁ、その通りだが——固有スキルにはさらに一段階特別なものがある。それが——」

「覚醒……」


 遮ったのはミーナさんだった。


「おぉ、ミーナも知ってるのか?」

「私の事をミーナと呼び捨てしないでください」

「……じゃあこっちもドラゴと呼ばないでよ?」

 

 って、何バチバチやってんだよこの二人。


「はいはい、変に喧嘩しないでくださいよ……」

「「喧嘩じゃない」」


 揃えて俺に視線を向ける二人。

 元とはいえ、上級と絶級の視線は迫力がある。


「……ったく。私の方が上だって言うのに……知ってるんでしょ? 絶級魔女の事を」

「知ってるけど、それとこれとは関係ないわ。それに、あなたはもう冒険者じゃないから上ってわけでもないわよ」

「だからそこで張り合うのはやめてくださいって……お二人とも強いのは分かってますから! 話が進みません!」

「分かったわ……」

「はぁ、もう」


 混ぜるな危険とはこのことだろうか。


「それで、スキルの覚醒って?」

「あぁ、分かったよ。私のとこの図書館に魔法書意外にスキル書っていうのもあっただろ?」

「え、まぁ……読んでたのバレてたんですね」

「監視魔法が働いてるからなぁ。お前のすることは丸見えだ」

「……お、俺のあんなことやそんなところも?」

「もちろんな」

「うそぉ⁉」


 丸見えってまさかぁ、あの——


「話がずれているわよ」

「——んっ、そ、そうですね。えと、それで?」

「あぁ、スキル書は読んだか?」

「いや、そっちは読んでないですね……一応最近は中級魔法を勉強してたので」

「それなら、まぁ知らなくても当然かな」

「……重要なものなんですか?」

「それはもう。国家機密くらい?」

「いやなんであんなおんぼろ図書館に置いてるんですかっ」

「まぁまぁ、うちに勝てる奴なんてこの辺にいないから」

「ですけど——」

「いいからっ。それで、そのスキル書に書かれている重要な事柄が固有スキルの覚醒ってやつ。まぁ、一介の冒険者に聞かれちゃ都合が悪いから隠してたつもりなんだけど……今思い出した!」

「……おい、まじか」

「……やっぱり、絶級の魔女ドラゴは抜けているって言うのは本当みたいね」

「んで、そうだ。これも王様からの言い伝え」

「はい?」

「スキルの覚醒をした人間を見つけたら匿えって言われてるんだ。いつかは英雄級冒険者になってもらって魔王を倒すためにと」

「ってことは、俺は?」

「つまり、うちの図書館でスキルを磨けってことだ」


 というわけで、俺。

 再びあの王城に戻されそうみたいです。








 一方、そのころ。

 王城では。


「……あの転生者がまさかっ」

「えぇ、ドラゴ様からの情報ではありますが正直耳を疑っています。私どもも全力を挙げて王立図書館の書籍や王城書物庫から情報を得ていますがあまり結果は芳しくなく」

「あ、あぁ。依然探してもらえるとありがたいが……にしても、どうしたものか」

「正直なところ、ドラゴ様の情報が正しいとも思えませんし……我が国の他の英雄級冒険者からもあまり関わるなとのことでして」

「まぁ、奴は我が直々に抑えつけておるからな。ランク付けも絶級で留めているのも奴に好き勝手されないためでもあるし。消しておきたい勢力ではあるが……それも出来ぬしな」

「えぇ……やっぱり、今のところは様子を見ながら飼いならしておくのがよろしいかと」

「そうだなぁ。ひとまずはそうしておこうか。お主もひとまずは策を巡らせておいてくれるか? 念のため、奴らには見張りをつけておけ」

「承知しました」





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界リーディング〜転生特典が速読スキルで王様から捨てられたけど、実は本を読めば読むほど強くなる優れものスキルだった件〜 藍坂イツキ @fanao44131406

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ