第5話:双子
ピンクのふわふわとした髪を風に靡かせ夕暮れの街を歩いていく。愛らしい天使のような外見にすれ違う人々が振り返る。そんな視線がさも当然というように”彼”は目的地へと向かって行く。人混みを進み徐々に人気のない路地裏へと入り込む。たどり着いたのはとても天使が来る場所とは思えない雑居ビルだが”彼”は迷いなく中へ入っていきある扉を潜った。
『ねぇ〜、ジャックもう来てんでしょ〜?』
愛らしい声で目的の人物、ジャックを呼ぶ。すると奥の方から気の抜けるような声で返事がきた。
『えぇ〜?出雲じゃんもうきたのぉ〜?』
今いい所だったのにぃ〜と不貞腐れた声を出しながら奥から出てきたジャックは全身に夥しい”赤”をまとい両手には彼の愛用するナイフを握っていた。
『うっわ、きたなっ!!どうして君ってばもっと綺麗な”仕事”をしないかなぁ!!僕に匂い移さないでよね!?』
綺麗な顔をこれでもかと歪めた出雲にジャックはヘラヘラと答える。
『あっはwお前もっとえげつない事する癖に♡まぁ確かにこれじゃあ荷物触れないしちょ〜っと待っててね〜!!』
と、機嫌よくナイフを振り回しながら奥に戻っていくジャックを見つめながらため息をつく。確かに予定より早く来てしまったのは自分なのでそれまでにジャックが”何”をしていようと自分にそれを咎める権利はない。そう考え近くにあるソファへと座り大人しく待つことにする。
暫くすると全身サッパリとしたジャックが戻ってきて自分の前にあるソファへドカッと座り今日の目的である話を始めた。
『今回は急ぎじゃないみたいだけど〜なんか女子供ばっかり消えてる事件があるらしいんだよね〜。しかも〜身寄りがなかったり家出してたり追い詰められて後に引けないような奴ばっかり狙われて死体も出てこないってね?』
と笑ってるようで笑っていない顔で話すジャック。それを聞きながら静かに瞳へ怒りを灯し愛らしい顔に似つかわしくない舌打ちをする出雲。一瞬のうちに室内がシン…っと静まり返ったあとその空気をぶち壊すようなおどけた声でジャックが話を続けた。
『ってな訳でぇ〜!!今度は行き場もなく夜の街を不安そうに彷徨う天使ちゃんとして頑張って♡』
つまりは犯人を誘き出す為の餌である。そんなジャックの言葉にも特に反応せず淡々とした返事をする。
『わかったよ。今回は俺一人でいいの?は?』
『今回は一人でもいいよ〜出雲的には八雲はあんまり動かしたくないんでしょ〜?』
と特に興味も無さそうな声で返事をするとカバンから何かを取り出す。
『は〜いコレが今回の資料ね〜。終わったらいつも通り初期化しといて〜』
とUSBメモリを差し出す。
『了解。八雲にも話したいから動くのは2日後からかな。いつも通り報告は二人でBARに持っていくから。』
じゃあ、とUSBメモリを受け取りそのまま出口へと去っていく出雲をヘラヘラとした顔のまま手を振り送り出し、バタンッと扉が閉まったのを確認した後立ち上がり先程まで”仕事”をしていた部屋に戻って行った。
ジャックと話を済ませた後そのまま自宅へ帰宅した出雲は自身と瓜二つの顔をもつもう1人の天使…否、姉である八雲に先程までの出来事を話していた。
『…という訳で今回は僕一人で大丈夫そうだから僕が行くよ。八雲は連絡係をお願い。2日後から行動開始するからそのつもりでね。』
と、伝えたあとギュッと八雲を抱き締める。
『えぇ、わかったわ。何かあれば必ず私が守るから、好きなように動いてちょうだい。』
そう返事をしながら八雲も出雲を抱き締め返す。そして二人見つめ合い額を合わせる。その光景はどこか神聖な儀式のような空気を纏っていた。
JUDGMENT 柊さくの @bloodcross
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。JUDGMENTの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます