第39話

昼食を食べ、午後から書庫にて魔力の上昇について調べることにした。執事のエアルビムも同行している。私はとにかく魔法関連の本を読みあさり、エアルビムに本を運んでもらう。そこで得られた方法は、魔法を使い続けることで微量ながらも魔力が上昇すること。魔物の肉を食べることで魔力の上昇の助けとなる可能性があることの二点だけであった。


それを調べるだけで夕方になったので、私は裏庭へ向かう。アダルヘルムとの約束のためだ。約束はアダルヘルムとだけであったがそこには他の三人も待機していた。


「では、アダルヘルムは石生成の魔法を使ってみてくれるかしら」


私がそう尋ねるとアダルヘルムは無言で頷き、石生成の魔法を使った。出来上がった石は扱いやすいようにレンガのような形になっていたが所々にひびが入っていた。これでは流石に石材としては使えないであろう。


私には調合スキルの効果なのか魔法式を視ることができるため、原因がはっきりと分かった。この魔法は砂から石を作成する専用の魔法であり、水や他の不純物を取り除く効果がなかった。そのためそれらがひび割れとなっていると思われる。


私は石の元素がしっかりと組み合わさるように魔法式を改良し、呪文を作り出した。使用魔力は倍ほどに膨れ上がってしまったが仕方ないだろう。アダルヘルムに残りの魔力量を聞いてみると流石に石生成二回分の魔力は残していなかったため、呪文だけ伝え寮で暗記するように四人全員に言い聞かせた。


次の日、午前中から魔法師候補の四人が来たので、訓練をする前に一人ずつ部屋へ呼んだ。そして、鏡写しの儀を受けるかどうかを聞く。答えはテベリオ以外全員受けるとのことだった。もちろん危険性については説明したし、受けなくても解雇したりはしないことも伝えた。それでも受けると言ったのはこの仕事以外につける仕事がないと考えていると私は思っている。


三人の鏡合わせの儀を済ませ、昨日改良した石生成の魔法をアダルヘルムに使ってもらうときれいな石材が出来上がった。試しに護衛にハンマーでたたいてもらったが割れることもなかった。石材としては合格なため四人にはこれを量産してもらうことにした。


午前中は訓練を見ており、いつの間にか午後になっていた。昼食を摂り終えると魔法師ギルドのギルドマスターが訪問してきたとの報告を受ける。私はエアルビムとともに来賓室に向かった。


私が来賓室に入っても魔法師ギルドのギルドマスターは立ち上がりもせずに椅子にふんぞり返っていた。私が要件を聞くと、ギルドマスターは口早に話し出す。


「お前が無詠唱の魔法を使えるという者か。本当にガキだな。その方法を私に教えろ。そうすれば月に銀貨一枚の報酬を与えてやろう」


流石に私もイラっとしたので無詠唱で戦闘用に開発した衝撃を飛ばすインパクトという魔法を腹に、結界を口元に展開した。ギルドマスターは腹に衝撃を受けおもわず吐いてしまったが結界により行き場を失った吐しゃ物に自分から突っ込んでしまっていた。


「エアルビム、ギルドマスターは体調がすぐれない様子です。このままお帰り願いなさい」


私がそう命令するとエアルビムは嬉々としてギルドマスターを追い出した。


私はすぐに執務室に戻り王都の魔法師ギルドのギルドマスター宛に手紙を書く。今日の一軒と無詠唱の魔法がどのような扱いになっているかの確認のためだ。手早く書き終えた手紙を戻ってきていたエアルビムに渡し、なるべく早く返信が貰えるように段取りを組んでもらった。


「これ以上何事もないと良いのだけれど・・・」


これはフラグだと思い、私は先手を打つために領主様の館へ向かった。

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