第27話

ポーションを作り終わると、店の表には冒険者の列ができていた。それはこのお店で治療を受けた人たちであった。先頭にはヨナス様が立っており、話しかけてきた。


「よう。嬢ちゃん。ポーションはできたのかい?」


「はい。ヨナス様。とりあえずここに居る人達を治すには十分な量があるかと思います」


「じゃあ、始めてくれ。それと俺のことはさん付けで構わねぇ。様なんて呼ばれると鳥肌が立ったわ」


私は笑いながらお店へ引き返していく。その後に一人ずつお店に入っていていた。私は慎重に一滴ずつポーションを傷口に垂らし治療していく。結果はもちろん完治だ。


全員を治療し終わったのはお昼ごろだった。朝食を食べていなかったので私のお腹が食べ物を要求している。お店は途中から来ていたドゥニさんに一時任せ私とペルリタさんは食事をとることにした。


食事を終え、少し休みを入れようかと思っていたが、朝治療して出ていった冒険者が戻ってきていた。また怪我したのかと思ったがどうやら薬草を採取してきてくれているみたいだ。それもしっかりとした処理をしてくれているため裏庭に埋めるだけで済んだ。冒険者曰く。


「俺たちの生命線になるかもしれないんだ。できるうちに数を集めなきゃいけねぇのさ」


と言う。冒険者みんなが同じことを言うのでどこかで打ち合わせでもしていたのだろう。だが、時々怪我をして戻ってくる冒険者がいたのはご愛嬌と言うことにしておくことにした。


夕方になり店を閉めようかと思ったところで甲冑を身にまとった騎士が来た。見た限りでは怪我などしていなさそうであった。そんな騎士が私に話しかけてきた。


「ポーションとやらを扱っているお店と言うのはここで間違いないのかな?」


「はい。そうですけれどどういったご用件でしょうか?」


「ここにあるポーションを我々騎士団に献上しろ」


私は厄介事の匂いがして顔をしかめた。この騎士はそれが気に食わなかったようで。


「貴様、その顔は何だ。平民の分際で我々に歯向かうというのか?」


「お言葉ですが、私たちはそのような命令を聞いておりません。それに提供しろと言われてもガラス瓶が足りないため提供する方法がございません」


「貴様」


叫ぼうとしたところでその騎士は別の騎士に羽交い絞めされていた。その様子を見るにどうやら先程の発言はこの男の独断だったようだ。その根拠は今まで怒りで顔を赤くしていた男が羽交い絞めにされ何やら豪華な鎧を身にまとった騎士が現れると顔を青くしていたからだ。その豪華な騎士が私に話しかける。


「この男が大変失礼なことをしました。我々にポーションの提供は今のところ必要ありません。しかし、在庫が揃い、提供のめどがついた際にはこちらにポーションを渡していただきたい。これは国王様よりの命です」


「分かりました。冒険者の治療分を残すことになりますが、ガラス瓶が届き次第提供させていただきます」


「かたじけない。この男はこちらで処理させていただきますがよろしいでしょうか?」


「処理とは、殺してしまうのですか?」


「まさか、この状況下で戦力を削ることなどできません。この男には前線に向かってもらいます。そうすれば戦闘が終わるまではこちらにちょっかいを出すことはできないので安心してください」


「わかりました。もともとこちらでは手が出せない問題なのでそちらにお任せします。それでポーションが必要と言うことでしたがいつ取りに来られるのでしょうか?」


「そうですね。何か準備した方がいい物はありますか?それの準備ができ次第伺うということにします」


「それではポーション用のベルトポーチを用意した方がいいかと思います。そうすれば戦闘中にもポーションを使用することができるので」


そう言って私はポーション用のガラス瓶を結界で見せる。ついでにポーチの依頼をしたお店も教えておく。これでガラス瓶のサイズなどで困ることはないだろう。


「情報提供感謝する。それではそれまでに準備をよろしく頼む」


そう言って騎士たちは去っていった。

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