76-ダッシュ2
手をこまねいていることはできないと思って、外周を歩いていた。
だから、たまたまだった。
俺は校門の方を見ながら歩いていた。
突然、何者かが走ってきた。
校門から見える道を2秒ほど。
50メートル以上離れていたように思うが、人影は間違いなく見えた。
「凪元?」
と思ったのも束の間。
もう一つの人影が現れ、俺は能力の使用を感じた。
俺には状況がはっきりとはわからなかったが、あいつが今能力者と対峙していることだけは分かった。
一目散にそっちに向かった。
凪元のことを考え続ける。
あいつは今能力者と対峙している。
浮いていた?
テレキネシス。
人体を持ち上げられるのか。
かなり強力じゃないか?
暗くてはっきりと見えないにしても、外にある光によって、人がいることくらいはわかる。
俺の記憶、保ち続けろ!
全速力で走り、走りながら叫ぶ。
「凪元!」
俺の声が届いたようだ。
凪元はこちらに顔を向けた。
そしてもう1人の人物もこちらに顔を向けていた。
アレは誰だ?
「みずさわかみ!あたる!」
(そんな俺の疑問を察したかのようなタイミングで凪元が叫んだ。
いや、あいつのことだ。必要最低限の情報を俺に与えるつもりで叫んだだけだと思うが)
敵の名前だな。わかったぞ。凪元。
みずさわかみ?どこかで聞いた名前だな。
と思ったところで、例の「みずさわかみ」なる人物は、腕を伸ばし、手のひらを前に向けたかと思うと、腕を勢いよく後ろに回した。凪元が後ろに吹っ飛んだ。
なるほど。そういう能力ね。
「いった!」
随分乱雑に投げられたようで、ゴロゴロと転がった凪元が声を漏らしている。受け身を全くとっていなかった。
縛られてるのか?
と凪元が吹っ飛ばされて痛がっている間に俺は例の能力者の前に立った。
「水沢上中」
奴と対峙し、顔を近くで見たら思い出した。暗かったが、微かな光で顔が見えていた。問題ない。
あいつだ。
「くっ」
と水沢上は俺が前に立つと、そう呟いた後、俺のは反対方向に、凪元の方には目もくれず逃げ出した。
「おい待て」
俺が追おうとすると
「待って!木々村くん!追う前に僕の縄をほどいて!」
凪元が俺を引き止めた。
俺は一瞬迷ったが、今は学校内での戦いは絶望的に向いてないので、凪元の判断に従うことにした。
凪元の元に向かい、腰を下げた。本当に縛られていた。
「何で縛られてるんだ。油断したのか」
「油断……そうだね。油断かな。気づいたら縄で縛られてた」
多分能力を使われたのかも、と小さく自信なさげに凪元は呟いた。
持っていた小道具のナイフで縄に切り込みを入れ、縄をほどくと凪元は立ち上がり、はぁーいった、と漏らしながら手首をブラブラさせた。
「いや、ホントプロテクターつけておいてよかった。結構勢いよく飛ばされたよ」
身体の調子を整えたあと、凪元は俺の方に向かって言う。
「いやー。助かった。あのままだとどうなってたかわからなかった。ありがとう」
「間に合ったようで良かった」
俺はお礼に返事した。
水沢上はもう視界からは消えていた。音もしない。
「どうする」
「うーん。とりあえず、木々村くんにメモとして敵は水沢上中って送るね」
と凪元は携帯端末を取り出し、俺にメッセージを送ってきた。
ぶぶぶと端末が震えた。
「これでよし。とりあえず学校出よ。多分だけど、僕1人で素手だけじゃ水沢上はキツいかも」
「そうか」
俺は凪元に従って校門から出ることにした。
俺と凪元は校門までの数十メートル、歩きながら話した。
「木々村くんは、水沢上中のこと、どれくらい知ってる?」
「??確か生徒会で会ったような……」
今思うと、この時点で水沢上と対峙したことは思い出せていないようだった。
「なるほどね。水沢上って高校生にしてはかなりすごいやつでね。詳しくは外出てからにしよ」
と、外に出てから凪元から、水沢上についてのレクチャーを受けた。
水沢上がいかに並外れた高校生かということを聞かされた。
「なるほどな。でも、所詮は高校生だろ?」
お前なら全然余裕で撃退できるんじゃないか?
「いやいや、木々村くん。相手は能力者だよ?しかも頭もいい。そんなん怖過ぎでしょ。僕殺されかけてるし」
「殺されかけてる?」
「うん。コンクリートブロックを頭に凄い勢いでぶつけられそうになった」
「それは危ないな」
もう少しでコンクリートブロックギロチンだったよ、と凪元に何が起こっていたのかを聞いた。
そしてそのついでに体育館に忍び込んだ時のことも聞いた。
最初は随分と余裕をぶっこいていたようだ。
「で、どうするんだ、あいつは。家に突撃して能力を奪うか?」
「うーん、それでもいいけど、多分水沢上のテリトリーには入らない方がいい気がするんだよねー。とりあえず明日学校に行ってから……いや、木々村くん学校の中ではポンコツだったか」
事実だ。何も言い返せない。
「明日の学校終わった時に待ち伏せとかどう?明日の学校は休んで。木々村くん、皆勤賞狙ってる?」
「いや、狙ってない」
「じゃあ、明日学校休んで終わる頃に水沢上くん突撃しようか。僕が囮になって能力使った瞬間に木々村くんが「えい」ってやって終わりでしょ」
そんな簡単に行くか?1人では水沢上の相手は厳しいんじゃ?
「僕1人だと厳しいと思うけど、木々村くんがいれば何とかなるんじゃないかな?水沢上くん、木々村くん見て逃げたし」
「そうか」
だが、何で逃げてたんだろうな。2対1を不利だと思ったか?
「僕が縛られてたのに?きっと木々村くんを見て恐れをなして逃げたんだよ」
「俺に恐れを……」
思い当たることとしては、やはり轟剛力のことだ。あの噂によって逃げ出した?
「古今泉ちゃんに連絡して、明日水沢上が学校に来ているかだけ確認させてもらおう。それで学校にいたら、僕たちは学校を休む。学校にいなかったら重役出勤って形が1番丸いんじゃないかな。明日何か学校で用事ある?」
「いや、ないが」
「じゃあ決まり。僕は帰ろうかな……。あ、いや、ちょっと待って。やっぱり1人になるのは危険かも。今日は油断できない。今から僕の家に泊まりに来ない?」
「は?」
どうしてそうなるんだ?
……流石に恐れすぎじゃないか?
「考えすぎだったらいいんだけど、水沢上は底が知れない怖さがあって。木々村くん、水沢上が能力を使って偵察に来たとしても、わかるでしょ?」
「それは多分わかる」
「じゃあちょうどいいんだよ。家の人に確認とってさ。
僕の家に泊まるって。何か戻った方がいい理由があるなら、僕も一緒に行くよ」
そこまで言われたら仕方ない。確かに今回は能力者相手だしな。凪元が厳しいと言っているなら、確かに俺がいた方がいいのかもしれない。
俺は殿子さんに連絡して、師匠にも軽くメッセージを送っておいた。
「僕も車を呼んだから。もう少ししたら来るよ」
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