第4話 すーぱーぷよぷよ(PZG)

 チェスに将棋に囲碁などと、プレイヤーの頭を悩ますパズルゲームは昔からあった。


 時に快楽をもたらし、時に絶望を味わってきたジャンルでもあり、そのパズルゲームが手元からテレビという画面に変化しても、人はそのゲームを大いに楽しんだ。


 そう、後に多くのゲーマーから称賛され、大人気作と呼ばれる、という画期的なゲームの登場である。


 実は、ぷよぷよの歴史は恐ろしいほど古い。

 ファミコン時代には既に確立され、当時から他には似つかないオリジナル作品でもあり、その優秀さを認められて、セガの配下にも置かれ、ゲーセンでも、必ずと言っていいほどあるゲームだった。


 ルールも単純である。

 四角い箱に落ちてくる、二組のスライム状のぷよぷよを消していき、相手側を攻撃して、妨害のおじゃまぷよを発動させ、相手側のぷよぷよが画面上まで埋めつくし、詰んだら駄目よ、あぷぷっ……と窒息させれば、勝ちである。


 だが、ルールは簡単だが、ぷよぷよを消すのは意外と頭を使う。

 同じ色のぷよぷよを四つ以上重ねると、その色のぷよぷよが消えるという仕組みだが、これを連鎖しなければ、相手側に大きなダメージは与えられない。


 ぷよぷよは連鎖で消して、なんぼの世界だったのだ。


 ──私がぷよぷよを手にしたのは、スーファミからのすーぱーぷよぷよだった。

 箱も取説もなく、遊んでみないと分からない裸売りであった、このソフトのどこに釘付けになったのか?


 単刀直入にヒロインのアルルや、お供のカーバンクルが可愛かっただけである。

 ミーハーで可愛いキャラに弱い私は、そのゲームに一目惚れして、ウキウキ気分で家路に向かったのだ。

 ここまでは、いつも通りのゲーマーの帰宅である。


 さて、半切りの食パン(カセット)をセットし、電源ボタンをポチりと入れると、小洒落た音楽に『すーぱーぷよぷよ~』と喋るキュートな声。

 当時大人気だった声優、三石琴乃みついしことのさんの声を採用したアルルのボイスは、様々なメディアで大活躍していった。


 ここで話は少し反れるが、パズルゲームと言っても、ぷよぷよが初めてプレイした作品ではない。

 テトリスやパズルだまという作品に、カプセルを消していくユニークなゲーム、ドクターマリオなども体験していた。


 しかし、どの作品も私を夢中にさせる作品はなく、ほぼ時間を埋めるための暇潰しとして遊んできた。


 そんな中、スーファミのぷよぷよと、期限切れの食パンたち(カセット)が並べてあり、破格な値段で売られていたワゴンセールにて出会ったのだ。


 ワンコインで、己の心の満腹感が叶う。

 これぞまさに運命の出会いである。


 ちなみにゲーセンに通っていた頃から、ぷよぷよの存在は知ってはいたが、キャラがキャラだけにオタクでマニアックなイメージがして、現場でのプレイは恥ずかしいだろうな……と思っていた。


 それでもって、隣には怪しげな麻雀ゲームが置いてあるし『何、ここだけ大人の空間で、子供は立ち入り禁止の世界なのー‼』と思わせた作品でもあったのだ。


 現に私の知る限り、そこのぷよぷよで遊んでいる輩はいなかった……。


 ──このスーファミ版では、ひとりでぷよぷよでストーリー仕立てのモードがあり、主人公のアルルが長い旅をしながら、最終的には世界を牛耳ぎゅうじる魔王を倒すという、とんでもないドラクエみたいな内容に、バナナの皮が足元にもないのに、思わずスッ転んだ記憶がある。


 出てくる敵キャラもユニークだ。

 ガイコツの姿をして、お茶を愛する者(どこで消化吸収?)や、鯛らしき身体に手足が生えているという、絵柄的に大丈夫なのか、このキャラたちは? と思わせ振りな相手も登場した。


 それらの相手と妙な漫才を繰り広げながら、サシで勝負に持っていくアルルに『この娘、こんな人体模型や人面魚という化け物相手にしてもおくすることはないんだ、可愛い顔に似合わず、中身は勇敢な娘さんだな』と思ってみたりもした。


 ──さて、このゲームは時間制限に従い、ただ、ぷよぷよを地味に消すだけでクリアできる内容ではない。

 先ほども言った通り、連鎖という派手な行動を起こさないと、確実には勝てないゲームである。


 しかも単純な二連鎖、三連鎖では手慣れた相手はびくともしない。


 四連鎖以上の攻撃ができて、初めて向こう側の相手と対等に渡れる内容であり、その連鎖を勘で狙って、闇雲にぷよぷよを積んでいき、相手をビビらせながら、自身の置いたぷよぷよで自爆するという事故もあり『今のはわざと負けてあげたんだ、次こそ本気でお相手するよ』と言いながら、心の奥では『自分でも何言ってるんだ、素直に負けを認めろ』的な捨て台詞を吐くことがよくあった。


 ゲーマーは意地っ張りで、プライドの高いヤツが多い。

 それには私も含まれるのか?


 しかし、この戦法は相手側が人間じゃないと通用しない心理的トラップというもので、ひとりでぷよぷよの時には通用しない。


 コンピューター側は自分に都合の良いぷよぷよだけを流し、三連鎖以上は当たり前の世界であった。

 強いキャラなら、なおさらである。

(諸説あります)


 私はそんなことも知らず、自分は未熟者なんだ、数を重ねて、力をつけるしかないと、敵に負ける度に思っていた。

 そんな過去の私にゲームやる暇があったら、将来に向けて、社会勉強しろよと言いたくなる。


 このぷよぷよでは対戦中、キャラがとにかく喋る。

 特にアルルの連鎖で台詞が変化するファイヤーから続き、最高攻撃『ばよえーん』の言葉は多くのプレイヤーを虜にし、ゲームオーバーの『ばたんきゅー』は、現代社会に疲れた日常でも使われ、社会現象にまで発展した。


 それから万を期して、このシリーズぷよぷよ通という続編が発売され、連鎖によるおじゃまぷよの相殺、新たなモードや、新キャラなども誕生したが、前作を遊び倒すうちにパズルゲームというジャンルが苦手なことが分かり、購入しても少しだけ遊んで、放置という現象に陥った。


 これが後の私が選ぶ選択肢になる、積みゲーの連鎖反応である。


 私はその後も流行りのキャラが出てくるコラムスや、パズルだまなどにも手を出すが、ここまでハマったパズルゲームは、このすーぱーぷよぷよだけであった……。


 よって、ここでのパズルゲームの紹介は早くも打ち止めである。

 ご清聴ありがとうございました。


 ──追伸。

 近年パソコンソフトからぷよぷよシリーズを収録した『超きゅ~きょく大全ぷよぷよ入り!』というのが出たらしいですね。

 元はダンジョンRPGが主流だったんですね。

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