第7話 ロメロ社製ワクチン
ゾンビ化の原因については、現在いくつかの説が上がっている。
その中で注目されているのは、四回目の新型コロナワクチンから採用されたロメロ社のワクチンの接種者がゾンビ化したという妙な噂だ。世界各地でロメロ社のワクチンを回収する動きがあるが、ロメロ社はその因果関係を一切否定。
「こんなもんはただの噂に過ぎない。が、念のために言っておくと、俺たちは来週から交代で休みを取って四回目のワクチンを打ちに行く予定だったから大丈夫だ」
マコトさんとリュウジさんが顔を見合わせて頷いた。
「俺はワクチンなんか鼻っから信用していないので、一回も打ってない」
ゲンさんらしい。
「ぼくはずっと家にいるから打つ必要ないし、母さんもまだ打っていないと思う」
ここにいる全員、まずはゾンビになる可能性はないってことになる。もしロメロ社のワクチンの噂が本当だとしても……。
……母さん。
あれから、何度かメッセージを送ったけど、未読のままだ。何の返信もない。
でも、奏太は、あの母さんがゾンビになって街をさまよっているとか、どこかで死体になっているとか、そんな姿がまったく想像できなかった。
母さんを探したい。
奏太はみんなにそう伝えたかったが、この場では個人的なことを言ってはいけない気がして黙っていた。
奏太の役目はギターでゾンビを倒すこと。ひとりでも多くの生存者を救うこと。
作戦会議が終わると、みんなそれぞれの準備を始めた。
マコトさんとリュウジさんたちは、ハマーの整備に抜かりがないか最後のチェックをしている。
奏太はボンネットの上のゲージに入って、ギターをチューニングしたりネックを拭いたりした。
ゲンさんはハマーに乗り込み、タバコをくわえながらナビを見ている。
準備は整った。ゲンさんがハマーを始動させると、地を這うような安定した低いエンジン音がガレージ内に響いた。
「手始めに、駅前に行ってみるわ。マコト、生存者がわかったら位置情報を送ってくれ」
「おう、任しとけ」
駅前には、母さんの務めるラウンジ・マダム日和がある。
「ソウタくん、お母さん見つかるといいね」
リュウジさんの笑顔に、奏太は大きく頷いた。
シャッターが開くと、ハマーは勢いよく飛び出した。
響撃クライベイビーズ 懲りた猿 @koruta
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