<第1話を読んでのレビューです>
冒頭は、冷たく硬質な独房の空気から始まる。無骨な刑務官と、過去に縛られた青年。淡々と交わされる会話の中で、ただの囚人で終わらない「何か」の気配がじわじわと滲み出す。描写は素朴で飾らないのに、腕に浮かぶ光る紋様の異様さや、暗がりに潜む不穏な存在感が、自然とこちらの想像を刺激してくる。
そして夜。閉ざされた刑務所に忍び寄る異形。蜘蛛を模した怪物の姿はおぞましく、読む者の背筋を冷たく撫でる。銃声や悲鳴、雨音に混じって響くその恐怖の臨場感は、まるで夢と現実の境目を踏み越えたかのように鮮烈だ。
そこへ現れるのが白髪の女性。静かで力強い登場は、物語全体のトーンを一変させる。糸から槍を編み出す技、そして確固たる落ち着き。彼女が差し伸べる手は、混乱と絶望の只中で、読者にとっても救済の象徴に思える。
第一話は、青年の過去や葛藤に深く入り込むよりも、「異能との遭遇」という一点に集中して描き切っている。その潔さが心地よい。余白があるからこそ、この先に待つ物語を自由に思い描ける。
不穏と静謐、恐怖と安堵。その振れ幅の鮮やかさが強い余韻を残す。続きが気になるプロローグでした。