第6話 消えないもの
まるで独白のように瑠美は話し始めた
「中学生のとき、私、乱暴されたの…」
え?
びっくりするほど頭が真っ白になった
と同時に、今まで生きてきた中でこれ以上ないほどの凄まじい怒り、おそらくこれは殺意と言えるかもしれない、というほどの感情でいっぱいになった。
俺の表情から察したのか、瑠美はまるで「そんな顔しちゃダメだよ」というように俺の手を優しく包んでくれた。
さっきまでの涙でまだ目が赤いままだが、それでも彼女は俺を諭すように、優しい顔で話を続けてくれた。
それは俺にとっては聞くに絶えない内容だった。でも瑠美のおかげでなんとか冷静に話の続きは頭に入ってきてはいた。
「でも最後は無我夢中でなんとか逃げ出せたからなんとか最後までは…その…されなかったんだけど、やっぱりどうしても怖くて…」
それはそうだろう
それは一生消えることの無いものだろう
それなのに、俺のことを気遣いながら話してくれる瑠美がどうしようもないほど愛おしくて、気がつけばいつの間にか俺も泣いていたようで、そんな俺の頬に伝う涙を彼女は優しく拭ってくれた。そして
「ファーストキスは、その…その時、あの、そういうことなんだけど、…でも、でも私の中でのファーストキスは、今、明宏くんとしたのがその…そうだから……ね?」
そう、少しはにかんだ彼女は伝えてくれるのだった。
「うん、ありがと…」
お互い少し涙目で、でも笑顔で、繋いでいた手の指を絡まらせた。そして俺はそっと、優しく彼女を抱きしめた。
この先、彼女を守るのは俺なんだ。絶対に幸せにするんだ。そう心に誓いながら…
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「どうしますか?」
ルーザの問に俺は答える
「………決めました。俺は……」
そう、これはチャンスだ
「俺を、タイムリープさせて下さい」
俺の答えにキョトンとした彼女だったが、どうやらすぐに俺の意図に気づいたようで
「ふふっ、やっぱり貴方に決めてよかった」
と微笑んだ
「たぶん死神さんとかなら俺達のことも、ある程度は把握してるんですよね?」
「もちろん、死神ですから!」
ドヤ顔で胸を張るルーザ。可愛いかよ
なんて思っていると話を先に進めてくれた
「じゃ、だいたい分かりますけど、いつに戻りたいんです?」
「はい、中学2年の春、4月に」
「分かりました。見つかるといいですね♪」
嬉しそうに微笑むルーザ
「ええ。すぐに見つけますよ」
と、俺もニッと笑った
待っててくれ、瑠美…
今度はちゃんと守るから。そして、今よりももっと幸せになれるようにするから
だから、また俺と……
「では、送りますね♪」
ルーザもニッと笑い、そしてこう告げた
「次会う時は、もっと幸せそうな顔見せてくださいね♪」
その後ルーザが何か唱えると、すーっと目の前が白くなり、何も見えなくなった
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