第4話 出会い
「はじめまして、沢井と言います」
「はじめまして、渡辺瑠美です。よろしくお願いします」
薄く茶色に染められたセミロングの髪を後ろで結んだ彼女は、少し緊張した雰囲気でぺこりとお辞儀をした。
大学2年の時、バイト先のファミレスで出会った女の子。俺の1つ下でこの春から彼女も大学生になったそう。大学は別々だったけど、そう離れた所でもなかったため同じ店にバイトに来たのだろう。
緊張と期待の合わさった初々しい眼差しを眺め「こんな頃もあったなー」なんて思いながら挨拶を済ませた俺は「可愛い子が入ってくれたな」てことを思うくらいで、それ以上のことは特に考えず仕事に戻った。
これが彼女、この6年後に結婚して妻となる瑠美との最初の出会いだった。
その後しばらくは大学も別々だったこともありバイト先で挨拶を交わす程度の仲で、それ以上特に親しくなる要素もなかった。
3ヶ月ほど経った頃には、たまに休憩時間が重なった時に雑談を交わすくらいにはなっていたがその程度。
そして夏休み。
バイト先の先輩の声掛けで、何人か仲のいい人達で集まりバーベキューをすることになった。そのメンバーの中に彼女もいた。
「晴れてよかったよね」
「ほんとそれ」
「でも暑くね?」
「それな…」
天候にも恵まれ無事バーベキュー大会は開催された。男女4人ずつの計8人だった。
「暑いしとりあえずなんか飲もうよ」
「渡辺さん、クーラーボックスの適当に飲んでいいからね」
なるほど。田村先輩と鈴木は渡辺さん狙いらしい。女子4人中2人が彼氏持ち、あと1人がちょっと離れた所ですでにいい雰囲気になってたらまあそうなるよな
どうすっかな。とりあえず準備でもしてようかな。誰もやる感じしないし
と、1人でバーベキューコンロを引っ張り出しガサゴソしてると後ろから「手伝いますよ」と声をかけられた。
渡辺さんだった。
その流れでみんなでわいわい準備し始め、主催の川真田先輩の乾杯の音頭からバーベキューパーティは始まった。
はじめ端っこでいい感じになってた川真田先輩と北島先輩は、仲睦まじくあーんとかはじめてた。いや、早くね?まあいいんだけど
心の声が漏れていたのか、クスッと笑う声が聞こえた。
「そうですね、でもちょっと恥ずかしいけど憧れたりもしますね」
目を細め微笑ましく見守るのは渡辺さんだった
「まあ確かにね。でも人前でやるのは俺はちょっと抵抗あるかなあ」
「そうですか。男の人はそういう人多そうですよね」
なんて話してると鈴木が「俺は全然平気だから!!」とニッと笑いサムズアップしてた。そこに田村先輩も「俺も!」なんて参戦してきた。
ああ、みんなやる気満々だな
なんてぼんやり眺めていると「沢井さん、普通に真顔で全然興味なさそうですよね」などと渡辺さんにツッコまれた。
その後少し世間話をし、そこからお互いの話をした。そして出身は何処なのか、なんて話をしてたらなんと同じ県だった。
「へーそうなんだ」なんてもう少し詳しく話を聞くとなんと同じ高校出身だった。そして中学まで同じだったのはさすがに驚いた。
「いやいや、それはないでしょ!」
「え、でも実際そうなんですよ…。私も信じられません…」
中高と同じ学校だったのに、このバイトはじめるまで会ったこともないなんて、ありえるのか…
実際彼女の実家は俺の実家とは校区は同じでもご近所さんというわけではなく離れているようだし、学年も違えばまあそういうこともあるか。特に俺は他の学年の女子とかそこまでチェックしてなかったし
「でも驚いたよ。偶然ってすごいね」
「私もびっくりしました」
このバーベキューパーティから親近感を覚えた俺たちは、これまでよりも話す機会も増え必然的に仲良くなっていくことになる。
…………………………………………………
過去のお話でした。もうちょっと続きます
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