第2話 天使のような死神
「あらあら、お困りのようですね」
え?誰?
と思って振り返る。
うわっ…めっちゃ可愛い…
今、この医師と瑠美とのやり取りを見ていた状況を一瞬でも忘れさせるほどの美少女。
背中までありそうな黒髪のポニーテールを満面の笑みで揺らしながら、真っ白なワンピースを纏う清楚系なアイドルのような美少女。
「私が死神になって連れてくの、貴方が丁度100人目なんです!だから初めて祝福が使えるからもう嬉しくて♪」
え?なに?どういうこと?
死神?100人?祝福?嬉しくて?
見た目と言ってる内容が全然合ってない。
俺は更に混乱するしかなかった…
┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄
「はじめまして、死神のルーザと申します」
ぺこりとお辞儀をする美少女な死神。
「新人研修も終わってバンバンあっちに連れてってたら気付けばもう100人!長かったような、早かったような、ホントあっという間ですよ!」
「…………」
「あら?どうしました?」
いや、可愛くこてんって首傾げられても…
「だいたいみなさん「鎌持ってないの?」とか「じゃあ斬○刀持ってるの?」とか聞いてきますけど、我々はそういう人間のみなさんのイメージにある所謂死神とは違うんです」
へー、そうなんだ
混乱からまだ帰ってこれない俺は、真顔でこちらを見つめる少女をぼんやり見ていた。
「亡くなった魂がこの世で彷徨わないよう、そして然るべき場所に辿り着けるよう
ふふっ、っと彼女は微笑んだ。
この子、死神っていうより天使だな
なんてことを思いながら少し帰ってきた俺は冷静に考えてみる。
……やっぱり分かりません…
「では祝福についてです!」
と、好奇心溢れる笑顔でずい、っとこちらに
近づいてきた彼女。そうそうそれ、それって結局何なんですか?ていうか下では瑠美が何かを決断した顔してるし!早く早く!!
「あ、下のやり取りが気になりますよね?大丈夫ですよ、止めましたから」
どうやら彼女が時間を止めてくれている模様。なるほど、助かります
そしてえらく真面目な調子で話し始めた。
「先程も伝えたように、私達は魂を連れて然るべき場所へと還るわけですが、人間皆それぞれ個性も今世での行いもバラバラです。ま、平たく言うと良い人もいれば悪い人もいる、ということです」
確かに、それはその通りだろう
「私達はある程度の区画で担当が決まってます。現在この地区の担当は私ルーザですが、例えば紛争地域なのでは亡くなる方も多いので、また区画分けは細かくなったりするのですが、要するに死者数に対して担当死神は等しく不公平のないようになっています。その中で100人毎に1人だけ、主様からのチャンスを行使する権利を死神には与えられるのです。これが祝福です」
この子、最初出てきた時のテンションと全然違うんですけど。なんか怖い。その上その祝福ってのがよく分からない…
俺の気持ちを汲み取ってくれたのか、ルーザは微笑み話を続けた。
「なんの罪もなく殺められたり、不慮の事故で亡くなってしまったり、いきなり自分の身に降り掛かってきたら悲しいですよね?そうすると死を受け入れられなくなる。すると魂だけ現世に留まり続け最悪の場合悪霊と呼ばれるようなものにまでなってしまう。ますます悲しいですよ」
彼女は本当に辛そうな顔をしながら話してくれる。優しい子なんだなあと思う。
「なんとか助けてあげられないものか。かと言ってそういう方達を全て救っていては様々なバランスが危うくなってくる。そのリスクを考えて祝福を行使できるのは100人に1人なんです。もちろん、犯罪を犯したような極悪人は論外ですので」
最後、ルーザは口角を上げ不敵に微笑む。
なんか初めてこの子が死神に見えた。
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