【完結】やり直しても同じだとつまらないのでちょっと頑張ってみようと思います

月那

第一部 過去へ

第一章 天使のような死神

第1話 プロローグ

早いな、あんなに小さかったのにもうあいつも大学生か


結婚して20年。上の子もこの春から無事に大学生となった。

社畜として毎日働き、気がつけば40台も半ば、白髪もちらちら見え始め、俺も立派なおじさんになってきた。


下の子が産まれてからは嫁ともお互いに「お父さん」「お母さん」と呼び合うようになり、名前で呼ぶことなんてなくなってどれくらい経つだろう。


いちお恋愛結婚で普通にイチャついたりもしたものだが、もう今ではスキンシップなんてものもなく、なんだか単なるになったような気がする。


別に今の現状に何か不満があるわけではない。うん、たぶん。

でも「なんだかなー」と思ったり思わなかったりもするわけで。


家にいても最低限の会話だけ、あとは「疲れてるから」と風呂に入って寝るだけの日々。まあ実際疲れてるのは事実で、「過労死はやめてよ?」と心配される日々。これも何かと入り用なのである程度は仕方がない。


ただ、週休二日ならぬ月休二日で睡眠時間が毎日3、4時間なのはさすがに辛い。おかげでたまに寝坊して遅刻もしばしば…




とりあえず眠いな…


と思いながら今日も職場へ。でも今日はいつもにも増して眠い。やばい


どこかコンビニで仮眠でも取れればいいのだろうけど、そんなことしてると遅刻する(時間ギリにしか起きれない)

そんなこんなでなんとか我慢して車を走らせていたのだが、しばらく走った後、俺の意識はなくなったのだった…


┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



意識が戻った俺が最初に見たのはベットに横たわる俺自身。


え?

俺を…見てる…?



………なるほど

これはやっちゃったっぽいな……


とか言ってる場合じゃい。


俺、死んだのか…



そう感じた瞬間、これが走馬灯というものなのかどうかは置いといて、この時、自分の記憶にある様々なものが頭の中を駆け巡った。記憶にないような小さな子供の頃のものまで出る始末。


そして今、愛する家族の顔が目の前に見える


ついこの前大学に受かって一人暮らしをはじめた上のお兄ちゃん。その兄と仲悪そうにしといて実は仲良さげだった妹。

そして、最近はちょっと素っ気なかった気もするけど、なんだかんだ俺の身体を心配してくれてた妻。

おそらく幻であろう3人は皆、見覚えのある笑顔だったので俺はほっとした。


だけど、ベットに横たわる俺の本体(?)の横には、呆然と立ち尽くし、静かに涙を流す妻、瑠美るみがいた。



「……だからあれだけ言ったのに…!」


呆然としていた瑠美は涙を流しながら、ベットに横たわる呼吸器を付けた俺を睨んだ。



「我々も最善は尽くしたのですが、恐らく意識が戻られることはもう……」


「…………」


「……如何なさいますか?」


なるほど。どうやらここであの呼吸器を外すと俺は完全に死んでしまうようだ


瑠美にももう俺が助からないってことは理解できてるはず。でも、自分の口から出た言葉で俺が、ってのは辛いよな…


ごめんな、ほんと…


なんで、なんでこんなことに…


あの時やっぱ残業しなけりゃよかった。

もっと普通に帰ればよかった。

というかもうちょいましなとこで働いてればよかった。

学生の時、真面目に授業受けてちゃんと勉強してればあんなとこで働かなくても済んだかもしれない。その前に高校の時もっと真剣に勉強しとくんだった。


でもそんなこと考えたところで今更どうも出来ない。もうどうにも…


ああ…自分に腹が立つ……



「あらあら、お困りのようですね」


え?誰?


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