第2話 進学(2)
「僕も、君みたいな分家と一緒にされたくないな」
「なッ! 何を言うんだ! 僕の家は立派な陰陽師だ! 侮辱するなよ!」
「さぁーどうかな?」と優一郎は肩をすくめる。なんだか不穏な空気が漂ってきている気がするのだが………。天人は後ずさるように舞子の隣に並んだ。
『な、何が起きてんだよ』
舞子の脳に問いかける。舞子は首を横に振った。
『私だって知らないわよ………。あの先輩、いつも授業に出席してはいたけど一人でいたから………』
『あの人は、不知火家の末っ子、
『東家の分家ってことは……優一郎さんと同じなのか?』
『同じであって同じではないっていうのが正解かな。小野内家は、今もまだ東家と繋がりがあって彼らの家の陰陽師達は皆実力者揃いだけど、不知火家は既に東家とは縁を切っていて、今は後ろ盾も何もない陰陽師の家系よ。御三家の後ろ盾がない家系なんてたくさんあるんだけど、そういう家は大抵のちにどこか御三家の傘下に加わるの。でも不知火家は、少なくとも東家の分家であったから、私たちと縁を切られた後なかなか支援してくれる家が見つからないのよ。……切られた理由も噂話でしかないし、そんな家に誰も手は貸さないわ。今じゃ、潰れるのも時間の問題ってことかしら』
一気に流れ込んでくる情報量に頭が混乱する。
『そんな関係なら、なんで花奏さんはこの学校に通って、しかも東先生の授業なんか取ってるんだよ。気まずいだろうが』
『さぁ。私もそこまでは知らないわ。ただ、お父さんのことだから何かと理由をつけて彼に陰陽師としての知識を教えてあげてるんじゃないかしら。花奏さん自身は、良い素質を持ってるから………』
急に言葉を閉ざした佰乃の顔を、天人は舞子を通り越して覗き込む。
『どうした………?』
『……いや。ただ私も強くなりたいって思ったの。東家の末っ子として、名前に恥じないような立派な陰陽師になりたいから、たとえ年上であろうと花奏さんには負けてられない』
メラメラと燃え上がる佰乃の闘心が目に見えてわかった。
な、なんだよ………結局陰陽師の奴らっていつも勝負心剥き出しじゃねーか…………。
天人の目には、時間があればすぐにでも手合わせしたいと、佰乃が言っているように視えた。鳥肌がザザざっと通り過ぎる。
『……ん、んん? ちょっと待って。ということはだよ。この授業を受けている私たちを含めた八人って全員、陰陽師ってこと?』
『そうよ。今頃気がついたの?』
キョトンと教えてくれる佰乃にたいして、舞子も天人も深いため息を吐く。こんなメンバーの中で、半妖の俺たちはのうのうと過ごしていたのか、と。
「どうせもう君の所の家はもたないんだろう? だったらとっとと陰陽師なんかやめればいいじゃないか。どうせ戦場じゃ逃げ惑うだけの屁っ放り腰なんだろうから」
「う、五月蝿い。僕だってやるときはやるんだ!」
「やるときはやるねぇ……。ははは、それって結局何もしない奴が言うやつこの言葉じゃない? 僕は、足を引っ張るような人はいらないと思うんだけどね」
「……ッく!」
花奏の拳がブルブルと震え、下唇をギュッと噛む。刹那、天人の脳内でパチリと火花が散ったと思うと、天人は零点数秒後の未来を視た。
花奏が顔を引き攣らせて“お前だって、たまたま運が良かったから小野内家に引き取られただけじゃないか!”と叫ぶ姿だ。天人には一瞬その意味が理解できなかった。
引き取られた?それってどういう………――?
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