第15話 暗躍

 惑星ドルーン、地球の約二倍の重力を持つこの惑星に人類が降り立ったのは数年前のことである。惑星グレイから避難してきたシアー共和国政府高官の家族や変わり者の開拓者たちは、高重力で過酷な環境にあるこの惑星でよく耐えてきた。

 彼らは惑星ドルーンに新たにシアー共和国を再興し、その首都をゾルーンに定めた。


 首都ゾルーン、石造りの街並みが並ぶ。中央の広い道を行くと丘の上に黒い大きな城がそびえていた。

 赤いドレスの女が中央広場を見下ろしていた。


 城から見下ろす街の中央広場に集まった住民の姿が小さく見えた。だが、集まった住民の熱気がここまで届きそうな気がした。興奮した住民の熱気は年に一度の収穫祭を上回る勢いで人々の中を伝染していった。それもそのはず、今日は本当の意味での収穫祭だったからだ。

 

 お立ち台の前には、粗末な衣を着せられた男女数十人が立たされていた。男女の容姿は様々だが共通して首に金属の首輪が嵌められていた。商人が声高に奴隷の競売開始を告げると景気よく応札する者たちで賑わった。

 彼等は惑星グレイのクレイナ共和国に潜入し、その住民を拉致し戦利品として惑星ドルーンに連れて来たのであった。

 首輪は奴隷という身分を現し、また、彼らが自由を再び得るために必要な金額を管理している。彼らの魂に接続された霊子レイスネット上の仮想通貨ウォレットの残高が奴隷から解放されるための代償である。今回の競売で付いた値段が彼らの借金に上乗せされていく。


「さあ、どうですか見て下さい。クレイナから仕入れたばかりの新品だよ。この女は若くて健康だ、力もそれなりにありそうだよ。どうですかお買い得ですよ。まずは百万霊子から・・・・・・

 現在、五百万霊子です。他ないですか?では五百万霊子で落札です」


 落札した者は、別に仕立てたテントで手続きを終えると奴隷を伴って自分の家に洋々と引き上げていった。


 この取引の場合、買い手は五百万霊子をウォレットから支払い。それぞれ奴隷商人は代金として四百五十万霊子、シアー共和国政府が五十万霊子を消費税として受け取り、奴隷の借金残高は五百万霊子となる。


 今回の遠征で獲得した獲物の総数は奴隷市に出荷された数の何十倍も多い。その中には酷い怪我をしたり、適性がないため奴隷として使えない者も多く含まれておりその大多数の者は家畜の餌等に転用される運命だ。



***

 太陽系マンズーマ・シャムセイヤ制御ルーム


「しかし、そこまで犯人がわかっているならシアー共和国に抗議すればいいのににゃぁ?」

『ああ、それは ・・・・・・ 

 クレイナ共和国自体は、ことの真相を掴んでいないからですよ。さきほどの状況説明は情報部の分析を元に私が推論をお話しただけなんですよ、船長』


 吾輩の疑問に少し申し訳なさそうにアルドが答えを教えてくれたにゃ。


「ふむ、だがアルドはその推論に自信があるのにゃ?」

『はい、勿論です。ただ、残念ながら彼らがどうやってシアー共和国に見つからずに悪さをしているのかが分からないのです』


「結局、現場に出てみるのが一番ね」

 しかし、うちの科学主任が妙に乗り気だにゃ?


「ふふ、科学の発展のためには新たな謎に挑戦しなくてはね」


「じゃあ、今回はサマンサ、ネコさん、そして吾輩が陣頭指揮を執るので後のことはアルドに任せるにゃ。それと出来る範囲で惑星ドルーンの状況を調べておいて欲しいにゃ」

『了解です、船長。お任せください』

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