第16話

「 な、何よ…ま、また…変なことするつもり……お、大声出すわよ… 」


そうは言ったものの、昨日のことをまた思いだしてしまった。


怖くなって、全身震えが止まらなくなって脚がガクガクして、立っていられないくらいだ。


とても大声なんて出せる状況じゃない…


「 さっきの…本当だから… 」


「 意味わからない 」


「 奪ったキス…返すから… 」


「 何バカなこと言ってるの?あなたみたいな嘘つきな人大っ嫌い!」


大声をあげた瞬間、脚の力が抜けて、膝から崩れ落ちそうになってしまった。


「 大丈夫!? 」

 

大野涼太の腕が私の身体を支えてくれていた。


「 や、やめてよッ!!触らないで! 」


「 嘘はつかない! 」


「 !?…頭 おかしいんじゃないの? キスを返すなんて…あなたがいくらモテモテだとしても、私はあなたみたいな人 だいっ嫌いなんだからッ! 」


な、何?…


私にスタスタっと近寄ってきた大野涼太は、いきなり、私の腰に腕を回したかと思うと、ぐいっと体を引き寄せ、私の低いハナのてっぺんに、自分の高いスラっとしたハナをチョンと近づけた。


ひゃっ!? や、やめッ!…


「 ずいぶん嫌われちゃったけど…君ってやっぱりかわいい…ますます返すのが楽しみになってきちゃった 」


『 パチンッ! 』


反省のカケラもない、人をバカにしたような言いかたにプチッとキレてしまった私は、彼の腕を振りほどき彼の頬を思いきり叩いてしまった。


同時にひとつ、またひとつ悔し涙が止まらなくなって…


「 約束する… 」


「 まだ言ってる……少しくらいカッコいいからってバカにしないでよ、二度と私に近づかないで、あなたなんて 顔も見たくない、大っ嫌いッなんだからあ! 」


私は泣きながらその場を走り去った。

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