第35話

 雲類鷲うるわし紅は、中高の頃誰にも言えない悩みがあると保健室に行っていた。保健室の養護教諭は、優しく紅の話を聞いてくれたため、紅にとって保健室は、心の拠り所だったが、それをよく思わない紅の両親や教師、所属していた部活の部員から保健室に行かないよう厳しく注意を受けていた。要は、自分の力で解決して欲しかったのだ。

 保健室の事で責められた紅は自殺を考え始めていた。

 その日、紅は、家の近くにある橋から飛び降りて自殺しようとしていた。だが、近くにいた男に止められた。

「君!危ないだろ!」

 男は紅を引き剥がそうとしたが、紅は抵抗した。だが、

「そんな選択をするぐらい辛い事があるんなら私が話を聞こう!」

 紅は抵抗するのを止めた。

 男は紅を連れて近くの公園まで行った。男の名は、桜田宗次郎。桜田は、ある犯罪組織を解体するためのグループのメンバーを探していた。

 紅は桜田にこれまであった事を話した。それを聞いた桜田は

「紅さん、他の生き方は考えた事ないの?」

「他の生き方ですか?いいえ…。私は高校を卒業して大学行くとしか考えてないです…」

「そうか…。質問を変えよう。保健室は卒業まで行き続けたいの?」

「はい…。だけど、親や他の先生から何だかんだ言われるからもう保健室とは関わらないようにしようと…」

「他人の目を気にし過ぎて本当の自分の気持ちややりたい事を諦めるのは勿体無いよ。帰ってからよく考えてもし答えが出たら僕のスマホに連絡して」

 桜田はそう言って自分の連絡先が書かれたメモを紅に渡した。


 桜田と別れた紅は、帰宅してからずっと考えていた。

「生き方を変えるか…」

 紅は呟いた。

 それから紅は桜田に言われたように他人の目を気にせず保健室に行っていた。相変わらず、保健室に行っている事について文句を言われても紅はめげないようにしていたが、やはり叱責を受けるとトイレで泣いていた。そんな日々が続き、1週間が経った。紅はふと桜田の話していたグループの事を思い出し、桜田にグループに入りたい旨を伝えたら桜田は喜び、翌日、桜田は紅の自宅を訪れ、紅の両親に今まで紅から聞いた話をし、紅に対して否定的に言わらない事を約束した。

 こうして、紅は8人のスターの1人、夏目雅子となった。

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