いい女

蟷姫とうきは、人間みてえに馴れ馴れしくはしねえ。


人間の女は、やれ、


『デートしよう』


だの、


『美味いものを食わせろ』


だの、


『夜景の綺麗なところに連れていけ』


だの、あれこれイベントを要求してくるが、俺あそんなもんに興味はねえんだ。メシ食って寝て、たまに出すもん出しゃ、後は体を動かしてられりゃそれで足りんだよ。だから俺がそういう奴だってのを分かってねえ女となんざ、関わりたくもねえっての。


こっちからも関わらねえからほっとけってんだ。


なのによお、俺に粉掛けてくる物好きな女もいたんだよなあ。戦場や、コーネリアス号の中にゃそんなメンドくせえ女はいなかったからよかったなあ。俺が惑星探査なんてえもんに参加したのも、そういうメンドくせえのから逃げたかったってのもあるっちゃあったんだよ。


その点、蟷姫とうきは、


『デートに連れていけ!』


『美味いものを食わせろ!』


『夜景の綺麗な場所に誘え!』


みてえなことを言ってこねえのが本当にありがたい。それどころか、力比べをしてきてくれる。俺にとっちゃ本当に<いい女>だよ。少々ガキくせえのがタマに傷だが、まあその辺は感覚も人間とは違うだろうしな。そこまで気にするこっちゃねえだろ。ホントにガキなら求愛行動なんてえもんもしねえだろうし。


人間の目には若く見えるってえだけで、もう十分に<成体おとな>なんだろうぜ。


しかも、俺と<スパーリング>をすると、技のキレが増してきててよ。特に蹴りが明らかに鋭くなってきてやがる。


で、それを発揮するチャンスってのが巡ってきやがった。


蟷姫とうきと一緒にいるようになってから二週間ばかり過ぎた時にな、


「ありゃ……<忍者ザル>……か?」


そうだ。真っ黒い毛に覆われた、やたらと手の長いサルみてえのが現れたんだよ。


首筋にチリチリとしたもんを感じて反射的にバックブローを食らわすと、ナイフみてえな長い爪を弾いた。それで俺の首を狙ってやがったんだ。


結果としちゃギリギリで対処できたけどよ。ここまで近付くまで俺に気付かせねえとか、やるじゃねえか!


そしたら忍者ザルは木の上に飛び上がって距離を取りやがった。正直俺も、木の上はそんなに得意じゃねえ。自分の得意なフィールドに位置取るってのあ、さすがだな。抜け目ねえ。


とは言え俺だって簡単にやられてやるつもりはねえよ。


だが、次の瞬間、忍者ザルが隣の木に飛び移った。代わりにそこにいたのは、


蟷姫とうき!」


蟷姫とうきが忍者ザルに襲い掛かったんだ。


「……」


木の枝に掴まった蟷姫とうきが、すげえ殺気で忍者ザルを睨み付けてやがった。


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