第2話 神界の本棚
「ふう、またここからか」
俺は転生者が最初に訪れる街の1つ『ヨイヨイ』の入り口にいた。
『ヨイヨイ』は始まりの街と呼ばれ、世界を恐怖させる魔王の住む魔王城から遠く離れた場所にある安全な街だ。『ヨイヨイ』は、なかなかに大きな街で、様々な店があり平和で活気に溢れている。
しかし、俺は何度もここに来ているので、街を見物する事もなく、スキル本を引く事ができる場所である神殿へと一直線に向かう。
街の入り口から神殿へは、大通りを真っ直ぐに500mほど進み、右に曲がって200mほどの場所にある。
神殿までの道は、何度も通っているので迷う事はないのだが、リセマラをする身としては、もう少し近くに配置して欲しいと思っている。
この街の神殿は、白い石造りの立派な建物だ。内部は広々としており、外からの光りが差し込み、厳かな雰囲気である。特徴は美しい女神を模った石像が各所に配置されているところだ。この石像の中には女神クレアもあるのだろうか、そんな事を思いながら神殿内にいるアメリアさんという神官を目指す。
俺は神官のアメリアさんの前に到着すると〈メニュー〉を開き、〈持ち物〉を確認する。
【神界の本棚 利用券×10】
これだ。この【神界の本棚 利用券】を使用すると、スキル本を引く事が出来る。転生者の初期特典として10枚貰えるので、スキル本10冊分という事になる。
〈持ち物〉から【神界の本棚 利用券×10】を取り出す。
様々な情報の確認や操作が出来る〈メニュー〉や収納や取り出しが出来る〈持ち物〉の仕組みはさっぱりわからないが、とても便利だ。これは転生者に与えられた特権らしい。
さらに〈持ち物〉には初心者冒険セットとして、冒険で必要になりそうな装備品や道具が与えられている。
ダメな運営だと思ってはいるが、スキル本以外の事については、なかなか気が利いている。
俺は取り出した【神界の本棚 利用券×10】を神官のアメリアさんへ手渡す。
「【神界の本棚】のご利用ですね? 準備いたしますので少々お待ちください」
そう言って神官のアメリアさんは、慣れた手つきで【神界の本棚】と呼ばれる戸棚の形をした神界と繋がるゲートを用意してくれる。
「準備ができました。どうぞご利用下さい。女神のご加護があらんことを」
目の前のテーブルの上に【神界の本棚】が準備され、いよいよスキル本を引く時がきた。ダメならリセマラを続ければ良いとはいえ、緊張の一瞬だ。
まずは【神界の本棚 利用券】の1枚目。戸棚の扉を開くと、パアっと白色に光り、中から1冊の本が現れてくる。
この見覚えのある光り方は‥‥‥ノーマルスキル本だ。
「くっ、ノーマルスキル本か‥‥‥」
「残念でしたね。まだまだこれからですよ」
神官のアメリアさんが笑顔で応援してくれる。
俺は【神界の本棚 利用券】を続けて9枚目まで使用したのだが、全てノーマルスキル本だった。
あの女神、全くご加護がないぞ。
「はぁ、またダメなのか‥‥‥」
俺はため息をつきながら、最後10枚目の【神界の本棚 利用券】を使用する。これもダメならリセマラを続行するだけだ。
期待をせずに最後の扉を開く。すると扉の中がキラキラと虹色に光り輝き出した! こんな虹色の輝き方は見たことがない!
そして虹色の輝きの中から、黄金に光るレアスキル本が現れた。
「今までと違う! 金色だ! これがレアスキル本?! やった! ついにレアスキル本を引いた!」
「おめでとうございます! レアスキル本ですね」
今まで何度〈
俺は嬉しい結果に浮かれながら神殿を出る。
そして、神殿を出てすぐ目の前にあった噴水の広場で〈持ち物〉からスキル本を取り出し、どんなスキルを持っているのか確認してみる事にした。
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