第23話 メッセージ

「ガッくんたちも焼きそばにしたの?」


 まさやんの声が聞こえ、後ろをり向くと、僕たち以外のメンバーも焼きそばやフランクフルトを買ったようだった。


「どこにいるのか、探しちゃったよ」


「うん」


「みんな、射的とかで遊んでこないの?」


「だって、俺たちみんなでガッチーズだろ? 一緒いっしょに食べてからまた変なマーク探そうぜ!」


 ニコニコしながらそう言うリーくんや、まさやん、こうちゃんの顔を見て、僕の中に勇気と元気がいてくる。


 そうだよな!

 僕たちみんなでガッチーズなんだから!


「リン! 大丈夫だ! 僕たち五人もいるんだから! 五人でガッチーズだろ? きっと大丈夫だって!」


 僕がリンの背中をバーンとたたいて明るくそう言った時、盆踊ぼんおどりのやぐらの方から「どどーん!」と太鼓たいこひびく音が聞こえた。マイクで女の人が何かしゃべってる声が聞こえる。


『みなさーん! こんばんわー! 本日はおいそがしい中、小柴山管理組合主催こしばやまかんりくみあいしゅさい夏祭りにおしいただきまことにありがとうございます! また本日は大漁港花火大会たいりょうみなとはなびたいかいをこちらの展望台からもお楽しみいただけます。ぜひご家族でこちらもお楽しみくださいませ。それでは、小柴山夏祭こしばやまなつまつり! 天高てんたかく星空にひびわたれ! 小柴太鼓こしばだいこ幕開まくあけです!』


 そのアナウンスの声とともに、太鼓の音が響き始めた。どどーん、どどーんと力強い演奏が聞こえる。


「リン! 太鼓の演奏始まったぜ! それに、今日は花火大会の日だって!」


「あ! あれ見てよ!」


 まさやんが指をさす方向を見ると、さっきまでリンと見ていた夜景の向こうに花火が上がるのが見えた。ちょうどその方向には今日行った海原展望公園うなばらてんぼうこうえんがある。展望公園から見えた海の近くで花火大会がやってるんだ!


「すごいじゃん! リン! あれ、おばあちゃんちでいつも見る花火大会じゃん!」


「うん、うん! そうだね! お兄ちゃん! あの花火大会だよね!」


「今年も見れたな!」


 だからお母さんは今日おばあちゃんの家に行くと言っていたんだと思った。怪盗キューピーからの挑戦状ちょうせんじょうですっかりそのことを忘れていた僕は、絶対何がなんでも怪盗キューピーを見つけ出してやると思った。


「絶対見つけ出してやるからな! 怪盗キューピー! って、あれ?」


 なんだ? 今の花火!? すごく変な花火だった! それにあの形って?!


「今すごく変な花火があがった気がした! みんなも見ただろ?」


「変なって、どんなんだよガッくん」


「どんなって、なんか少し違うかもだけど——」


「——シルクハット」


「「「「え!?」」」」


「シルクハットみたいな形の花火」


「こうちゃん、だよな! だよな、だよな、だよな! もっかいあがるかもだし! みんな見ててよ!」


 こうちゃんのシルクハットという言葉に、僕たちは同じ花火がまた上がらないかを探す。遠くで見える色とりどりの花火の中に、さっき僕が見た花火、こうちゃんがシルクハットと言った花火がまた出てこないかを!


「「「「「あがったぁー!」」」」」


 今度は僕たち全員がその花火を見た! あれは絶対シルクハットの形だ! さっき僕が見たよりも、もっとはっきりとシルクハットの形に見える赤い花火だ!


「ガチで、あれそうだよな!」


「「「「うん!」」」」


「ああ! あそこ、あそこ見てよ!」


 リンが次に声を上げ、僕たちがリンの指差す方を見ると、花火があがる空の下で、チカチカと、白いライトのようなものがまたたいて見える。まるで展望公園の灯台とうだいから、何かメッセージを送ってるみたいだ!


「モールス信号だよ! お兄ちゃん! あれ! モールス信号だよ!」


 リンが立ち上がりチカチカする光を指差して僕にいうけど、僕はそのなんちゃら信号をよく知らない。リンは興奮しながらも冷静にその光を見つめてる。


「すぐにメモしなきゃ!」


 そう口に出し、リンは急いでリュックから探偵手帳たんていてちょうを取り出し、こうちゃんにペンと一緒に渡した。リーくんがスマホのライトでそのノートをらす。


「こうちゃん、いい? ツーって私が言ったら線をひいて、ツと言ったら、点を打ってね!」


「うん」


「ツーツツツツ、ツツツツー、ツツツーツー、ツーツーツツーツ、ツーツツツー、ツツーツツーツツ、ツーツーツツーツー、ツーツーツーツ、ツーツツツツ、ツツツー」


 何度も同じような「ツ」ばかりだと思っていたのが、しばらくすると同じ「ツ」のり返しだとノートをのぞき込んでいる僕にもわかる。あるところまで行くと、少し時間をおいて、また最初から始まっている。


「光が消えちゃった……。でも、これだよ! これが怪盗キューピーからのメッセージなんだよ! リーくんすぐにモールス信号って検索けんさくしてみて! 解読表かいどくひょうが出てくるから!」


 リンに指示されてリーくんがスマホで検索すると、すぐにモールス信号解読表が出てきた。それをもとに、リンが一文字一文字をノートに書き込んでいく。すると、日本語らしき言葉がノートに書き出された。


—・・・・・・・—・・— —— —・—・—・・—・—・— —・・— —・— —— — —・—・・・・・・—


「「「「「ボクノシマデアソボウ……!?」」」」」


「それって、僕が今フラバトのトンカチワールドで作ってるゲーム島の名前だよ?」


「「「「ガチで?!」」」」



 怪盗キューピーが僕たちに送ってきたメッセージは、まさやんが作ってるフラバトのゲーム島の名前!? てことは、家に帰らないこの先の謎が解けないってことだ!


「すぐ、家に帰ろうよ!」


 僕たちはリーくんのママに、いますぐに小柴山の山頂まで迎えにきてくれるようにとお願いをした。でも、なんでまさやんが作ってるゲーム島の名前なんて送ってくるんだ?!


 僕たちには、その理由が全くわからなかった。





 

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