第15話 さらなるヒント

 僕たちはバスに揺られ、終点しゅうてんの小山駅に到着するまで紙をながめながらさらなるヒントを探した。小山駅まで三十分。あと十五分くらいで到着とうちゃくするはず。


 できればそれまでに見つけ出したい!

 でもそんな簡単かんたんに見つかるはずもなく……。


「ガチでなんにもわかんねぇや……」


「うん」


「うん……そうだよね……」


「お兄ちゃんたち、ありがとね」


「リン、ありがとうって言うなよな! みんなの問題なんだから!」


「うん……そ…う……だよ……リンちゃん……ゔっ……」


「ん? まさやん?! ちょ、まさやん! 顔色悪くね?!」


「ガチで顔色悪いって!」


「うん!」


「だ……び……じょゔぉぶ……ゔぉえっ……」


「大変! お兄ちゃん! まさやんよったんだよ! 今すぐバスをりようよ!」


 バスにゆらられながら一生懸命いっしょうけんめい紙を見つめていたまさやんが、完全にバスによったみたいで、僕たちは急いでボタンを押して一番近いバスていで降りた。


 バス停の目の前のコンビニにみ、トイレに走るまさやん。それに付きうこうちゃんとリン。そんな状況じょうきょうなのに、「ラッキーアイス食お!」なんて言ってアイスとコーラを買って飲食いんしょくコーナーで食べ始めるリーくん。


「マジ目の前コンビニでよかったな!」


「リーくんサイテー。まさやんが大変なのに自分だけアイス食べて!」


「だって結構時間けっこうじかんかかってるし。ガッくんは紙しらべてるし、俺っちひまだもん」


「リーくんも僕と一緒にこの時間にこの紙調べて、何かヒントを見つけてたらいいじゃん!」


「ガチそれな! あ、まさやんもどってきたぜ!」


 ふらふらと青い顔をしたまさやんと、それを支えるこうちゃんの後ろから、心配そうについてくるリンの姿が見えた。三人は僕たちがいる飲食コーナーのテーブルまでやってくる。


「ほんと……ごめんね……」


「まさやんはあやまらなくっていいから。ちょっとここで休んでからいこ?」


 リンがめずらしく優しくまさやんに声をかけたその瞬間しゅんかん、リーくんが「ここ座ったら?」と動いたはずみでテーブルの上に置いてあったコーラのペットボトルがガタッとたおれ、僕が調べていた白黒模様しろくろもようの紙にこぼれた。


うそだろリーくん! なにすんだよ! あああ、コーラついちゃったじゃん!もう! ほんとリーくんは!」


「お兄ちゃん?」


「ごめんなリン、すぐくから」


 僕がそう言ってコーラでぬれれた紙を指でつまんで持ち上げると、リンが変な顔をしながらその紙を見つめている。


「リンごめん。待ってる時間に少しでも探し出そうと思って、机に紙を出してた僕も悪いよな」


ちがくてお兄ちゃん、これ見てよ!ほら、ここ、裏面の白い方、何か模様もようかれてるって!」


「「「「え?!」」」」


「ほら! ここ! ほら、これも!」


「うっそ! 俺っちまた役に立った的な?」


「と、とにかくこぼれたところきれいに拭いて、これがなんなのか調べてみようよ!」


 リンの指示しじでコンビニの店員さんに布巾ふきんりて、テーブルにこぼれたコーラをきれいに拭き取り、コーラでれた紙をテーブルに並べて置いてみると、そこには見たことのないような変な模様が三つ浮かび上がっていた。何かのマークを綺麗きれいに半分にしたように見えるその模様は、明らかに地図記号ちずきごうではない少し複雑ふくざつなものだ。


「リン、これを探せってことなのか……?」


「多分、じゃないとこんな綺麗に半分に切った模様描いてあるわけないよね?」


「「「「すげぇ〜」」」」


「リーくんお手柄てがら! まさやんがもう少し落ち着いたら急いで海原展望公園にみんなで向かお!」


 リーくんのまさかのフライドチキン落下事件に続く、コーラこぼした事件で見つかった模様はぐにゃぐにゃとした変な線で書かれていて、僕にはなんのマークを半分にした模様なのか、全く見当がつかなかった。



 僕たちはまさやんの回復を待って、ちょうどやってきたバスに飛び乗って海原展望公園まで向かった。



 海原展望公園に着いたのは十時をとっくに過ぎていた。

 リンの持っているポケベルをみんなでのぞき込むと、タイムリミットまで53時間を切っている。


 急いでこの変な模様を見つけ出さなくちゃ!

 あっという間に今日という日が終わっちゃうぞ!


「まずは公園の中から調べよう!」


 リンの掛け声に合わせて、僕たちは海原展望公園のバス停がある場所から、展望公園までの階段を急いで駆け上がった。


「まさやんはゆっくり登っておいでよぉ〜」


 僕がまだ少しだけ青い顔をしているまさやんに声をかけたけど、まさやんも頑張がんばって階段を登ってくるみたいだった。


 僕たちは結構けっこういいチームかもしれない!

 そう思うとなんだか嬉しくなって、僕はつい大きな声でさけんでいた!

 

「いけぇ! ガッチーズ! 絶対変なマーク見つけるぞー!」


「「「「おおー!」」」」


 セミの声にも負けないほど大きな声で気合を入れて、僕たちは長い階段を登った。





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