【ずーっと先】カレンの誘い(仮)

 書きかけ


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 「すごく言いにくいんだけど」とカレンに話を切り出されたロイは、案の定面倒臭そうな様子だった。

 「はい?」

 当然の反応だ、とカレンは思った。そもそも自分はパーティーに進んで参加するようなタイプではないし、正直打ち解けた気がしていないロイを誘うなんてとんでもない。それに、あえて彼を誘うなんて、それはまるで……「ロイの他に異性の友達(と言うより友達自体)がいない」と宣言しているようなものではないか。

 「他の『お友達』を誘えばいいじゃないですか。どうして僕なんです」

 「うん……。そうだよね」

 ぐうの音も出ないまま、苦笑いを保つしかなかった。

 「お兄さんたちは? 一人くらい暇なお兄さんはいないんですか」

 「ううん。兄さんたちはみんな忙しいの。それに、『男友達を連れておいで』って命令……じゃなくて頼んできたのは三番目の兄さんだから」

 「三番目?」

 ロイの記憶が正しければ、それはカレンの兄たちの中で「一番厄介な兄」のことである。

 カレンは無言で頷いた。

 「一緒に行ってくれたらそれでいいの。何もしなくていいから……ダンスとか」

 「当たり前でしょう」

 そう返されて、この時ばかりは安堵した。正直、人前で二人一組になって踊るダンスなんて踊りたくもない。

 「友達なの。その子、女性で初めて『少佐』になったすごい人なの。だからちゃんと祝ってあげたいの。でも私が一人で行ったりなんてしたら、きっとすごい浮いちゃうし、シャーロットに悪いから……!」

 カレンの捲し立てるような懇願を、ロイはいよいよ怪訝な顔で聞いていた。

 カレンはその反応を、先ほどよりもむし良い傾向だと解釈したのか、「あれ? シャーロットのこと知ってるの?」などという、やや的外れな質問をしてしまった。

 「知ってるも何も、今世間が騒ぎ立てている有名人でしょう」

 ロイによれば、新聞各紙で彼女のことが取り沙汰されているらしい。

 「世間」などというものに疎いカレンは、その世間が意外と狭いことに腰を抜かしてしまいそうだった。

 「そうなんだ。そう! きっとそのシャーロットで合ってるよ。でもあの子、目立つのとか好きじゃないと思うし、ちょっとかわいそうだなぁ。すごい人に変わりはないんだけど、そんなに注目されちゃって……。ちゃんと寝れてるのかなぁ?」

 いつの間にかそのシャーロットへの同情に移ってしまっていた話を、ロイは案外真剣に聞いているようだった。それがなぜかはわからないが、「世間の話題」に関することなら、彼は進んで耳を貸すようになるのかもしれないと独自の見解を導き出した。

 あと一押しだと考えたカレンは「美味しいお料理もたくさん食べられるはず」と咄嗟に付け加えたが、食に関心が薄いロイにとっては何の足しにもならなかった。

 ところが、カレンやシャーロットの軍の知り合いが複数人パーティーに参加する旨を知ったロイは、どのような動機でその結論を出したのかはカレンにも謎だったが、結局は「仕方ないのでお供しますよ」と承諾した。

 この一連の会話のせいで、カレンは、相変わらずよく分からない読めない人だけど、きっと自分が社会に対する知識を深めたら、ロイとはもっと仲良く会話ができるようになるはずだと、見込み違いの期待感を抱いてしまったのだった。

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