第9話 大学やめてホモのエサになってみたよ❤️

「キミは絶対研究者に向いているよ? 退学なんて、さすがにやめといたほうがいいんじゃないかなぁ。単位だって取れてるし」

「でも退屈で」

「友達いる? 隣の部屋に何人かいるけど、遊びに行ったらいいよ」

「はい」


 俺は退学を決意した。いちいち大学に通う理由は、前に親が「大学行かないといい企業に入れないぞ」と言ってきたからだ。それに飾りつけをするように、大学に行くことのメリットをとくとくと説く人々が大勢いて、俺はそいつらに洗脳されていたと気づいた。何がメリットだ、ただつまらない日常が続くだけじゃねえか。


 だいたい、大学に来て一つ分かったことといえば、俺には大学が向いてないということだ。それが分かった時点で、大学にカネを払う理由はどこにもない。俺を止めることができる人間はどこにもいない。そういうわけで、俺は今から退学届けをもらいに事務室へ向かう。


 *


 2日後、俺は大学をやめた。働く気も起きない。なんで働く必要があるのか、それはカネを得るためだ。でも今は貯金がある。いずれ底をつくだろうが、そのときは生活保護をもらえばいい。俺は大学に向いてないというよりも、社会に向いてないんだ。どんなに良い社会になったとて、それは社会である。俺には関係ない。


「そうだ、立ちんぼをやろう」


 ホモがいるかもしれない。確率は低かろう。どうしてもカネがないときは、ネカフェ難民になって日雇いの仕事でもするか。ネズミのようにたくましく生きていくぜ。


 *


 俺はまたしても、例の薄暗い小道にやって来ていた。この前とは違って、本気でカネ目当ての売春野郎として立っている。


「いくらがいい?」


 嘘だろ、いきなりホモかよ。


「すいません」

「そう」


 う、断ってしまった。あまりにもキモすぎて。


「フッ」


 隣の若い綺麗な女の子に、冷たく笑われる。蹴飛ばしてやろうか。


 それからというもの、ホモはなかなか現れなかった。代わりに女をかっさらう男どもが次々とやってきて、俺の隣に立つ女はどんどん入れ替わっていく。


「キミ、ホモ?」


 来た。チャンスだ。


「いや、俺は友達待ってるだけです」

「あっそ」


 うう、またも断ってしまった。俺はホモじゃないし、そういうのが嫌いなんだ。でもカネのために、なんとかして我慢して交渉に乗り出さなきゃならないってのに。


「あんたバカじゃないの? 女しか需要ねーよ」

「……」


 男を獲得した女が、そう言い捨ててきた。偉そうに言いやがって。需要があったら偉いのかよ。俺はそう思わないが、どうやら社会はそう思うらしい。


「はーあ」


 結局、ダメか。とはいえ家に帰るってのも面倒だ。ネカフェに泊まるカネはあるし、一回寝てもう一度この場に立てば、ホモを獲得できるかもしれない。そしてカネを得ることができるかもしれない。

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