僕には毒だ。@柿本英治
学校が終わって、クラス中に無視された僕はダラダラと帰宅していた。
クリスマスから年末年始、する事が無くなってリビングで参考書を読み耽っていたら、急に勉強スイッチが入った。
だからまた本屋に寄ってしまい、少し遅くなってしまった。
家の近くの公園の脇を通ると、花咲さんが待っていた。
教室では常に女子と男子に囲まれていた彼女は身動きが取れなかった。
帰りも確か囲まれていたはずだ。
あの城戸さんと本庄さんを初日で振り切ったのか。
すごいな。
「英治くん…お話、しませんか…」
彼女に話かけられ、気づいてしまった僕には、無視することは難しい。
彼女は割ときちんとした性格だった。だからあんな終わりは嫌なのだろうか。
でももう別れている。
僕の中でも、クラスの中でも。
もちろん彼女にとっても。
なぜなら髪が短いからだ。
古い考えかも知れないけど、一つの恋の終わりに髪を切る。そんな風に聞いたことがある。
いや、彼女は最新型のハードだ。きっと彼氏の趣味なのだろう。
少し胸が痛い。
髪を切るべきは古いハードの僕の方だった。考えが足らなかったな。
明日切ろう。
そうしたらこの僅かに残る、この胸の痛みも綺麗さっぱり消えて無くなるだろう。
まあ、恋も愛も僕には早すぎた。
そういう事なのだろう。
だってすごく肩が軽い。
オドオドとした花咲さん。僕の知っている彼女ではない。彼女の曇った顔はやっぱり見たくない。
僕の仕掛けのせいで心を痛めたのかも知れない。
可哀想に。
ならせめて、明るく話そう。クリスマスの時のテンションを思い出せ!
「いいよ、何かな?」
「…ごめんなさい」
…何の詫びだろうか。僕はもう確実に終わらせたつもりだ。夏休み前には既に片思いになっていた。終わったなら謝ることも、感謝さえも何にも必要ない。
けど、彼女が可哀想だ。
「大丈夫だよ。気にしてないから」
「っ、なん、で…いつ…から?」
「夏休み前だね。あ、でもほんとに気にしないで。良い夢見れたしね」
「そんなに…前から……夢…?…」
「大好きな人ができて、告白して、付き合えて。毎日がキラキラしててさ。なんだか、ずーっと幸せな夢を見ていた気分だったよ。だから…ありがとう……大丈夫、きっちり諦めたから。お幸せに。じゃあね」
「…ぇ…ぁ…あ、あ! 待っ────」
彼女を置いて、足早に公園を立ち去った。
何か言おうとしていたけど、これ以上の会話やごめんなさいは僕には毒だ。
その毒は僕の惨めさを枯らしてしまう。
その毒はまた僕を夢中にさせてしまう。
やっぱり他に何か壁が欲しい。
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