群青
懐かしい喧騒がする。
今日公民館に集まったのは島の子どもたちだ。まだ小学生前のちいさい子から、いちばん年長さんの広也くんまで。顔ぶれが島の分校と変わらないからか、まるで学校にいるみたいだった。
「お前ら去年もやったろ、灯籠作り。わかんない奴に教えてやれよ」
夏祭りで飾る灯籠は毎年子どもたちが作る。竹で組んだ骨組みに、ひとりひとりが描いた絵を貼っていくだけの、簡単な工作だ。私もテンちゃんも夏が来るたび灯籠を作った。こんなふうに、『大人』に指導されながら。その立場は数年前からテンちゃんのものだ。
「テンジー。あのねえちゃんと付き合ってんの?」
げほっ。と、テンちゃんがむせる音が背中で聞こえる。今日は守屋さんは来ていない。おばあちゃんのお世話があるから、と残念そうにしていた。
「うるせえ関係ねぇ」
「イチャついてたもんなー!」
ちっちゃい子っていつも冷やかしてくる。どこもそうなんだろうか。私も、確か、派手にからかわれて――テンちゃんはやっぱり、そんなんじゃない、って否定をしてた。そう、あれも確か、夏祭りの日で。
そのとき描いた灯籠は、群青色の魚だった。
『魚の灯籠、いいじゃん! 俺も大人になったら漁行きてぇな』
『テンちゃんはおうちの民宿やるんじゃないの?』
『両方やるんだよ』
そういえばあの頃はまだ「島を出たい」なんて言っていなかった。言い始めたのは、おそらく、その年の夏祭りのあと、だと思う。
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